「自己実現できる子」の親がしている3大習慣Photo: Adobe Stock

新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学、心理学、脳科学等、さまざまな切り口の資料や取材を元に「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー。100の「してあげたいこと」を実践するにあたっては、さらに詳細な「421の具体策」で、実際に何をどうしてあげればいいのかまで丁寧に落とし込んでいる。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

存在を心から認めてあげる

 アメリカの心理学者、アブラハム・マズロー博士は「人間は自己実現に向けて絶えず成長する」と仮定し、人間の欲求を5段階の階層に分けて説明しました。

 最初に空腹、睡眠など「生命の維持」を求める生理的欲求があり、それが満たされると次は「安全なところに住みたい」と求める安全欲求、さらに「家族、友人と親しくありたい」と求める親和欲求、そして「他者から価値ある存在と認められたい」と求める承認欲求へと、欲求の内容が進化していきます。

「自己実現」の欲求は階層の頂点にあり、人が自分の能力を発揮するには、下位の層にあるさまざまな欲求を満たす必要があるというのがマズローの考えです。

 子どもの「強み」を引き出す教育で、さまざまな学校の校長として活躍してきた教育者、ジェニファー・フォックスは、「子どもに健全な未来を望むのであれば、すべての子どもが持って生まれた価値を心から信じることから始めなければならない」と述べています(『子供の強みを見つけよう』日本経済新聞出版社)

 つまり、子どもが将来、自己実現できるようにするには、まずは子どもの承認欲求を満たしてあげること。そのためには子どものありのままを受け入れることが欠かせないということです。

 では、子どもの「存在そのもの」を受け入れてあげるにはどうすればいいでしょうか?

【その1】条件をつけない

 親としては子どものことを十分に認めているつもりでも、じつは子どもが「がんばったから」「よい成績だったから」と、条件付きでほめていることが意外と多いものです。

 成績が抜群によく、まじめな努力家でも、疎外感や失敗への恐怖を感じている子どもは少なくありません。

「どんなことがあってもあなたは私の宝物」「どんなあなたでも大好き」と伝えることで初めて、子どもの承認欲求は満たされます。

【その2】アドバイスを押しつけない

 親はよかれと思って、自分の体験やアドバイスを子どもに伝えようとします。

 ところが子どもは、必ずしもいつもアドバイスを求めているわけではなく、ただ話を聞き、受け入れてほしいと思っているだけということも少なくありません。

 子どもには、大人が理解し、信じてくれているという思いが必要です。そのために、「子どもの思いを聞く」という姿勢で接すると、子どもはむしろ自分からアドバイスを求めるようになります。

【その3】要求ではなく「気持ち」を受け入れる

 白百合女子大学の発達心理学者、秦野悦子教授は、「子どもの気持ちを受け止める」ことと「子どもの要求を受け入れる」ことは別だといいます。

 子どもが駄々をこねたり、自分の要求を曲げないときは、まず子どもの気持ちを受け止め、認めます。

 そうして子どもに「自分は認められた」と安心させてから、要求を受け入れられない理由を説明したり、改めて何をしたいのかを聞き出すとよいそうです。

 また、秦野教授は「その場から離れて気持ちを切り替えさせたり、ぎゅっと抱きしめて安心させたりすることも効果的」だといっています。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)

参考文献

ジェニファー・フォックス『子供の強みを見つけよう』(土方奈美訳、日本経済新聞出版社)
秦野悦子「子どものだだこね 『気持ちを受け止める』と『要求を受け入れる』とは別のもの」(ベネッセ教育情報サイト、2015/9/25)