スタートアップのバイブルとして名高い『起業のファイナンス』シリーズの最新刊として、『起業のコーポレート業務』が発売されました。オフィスの探し方や社会保険への加入、PR、反社対応、M&A・IPO準備など、総務・経理・労務・法務とEXITに関する全てをカバーする「スタートアップの実務大全」とも言える1冊で、スタートアップ以外の企業のコーポレート部門の人にも大いに役立つ内容となっています。
この連載では、主に同書の「コラム」を公開していきます。第7回は「スタートアップの決算公告」についてです。

アナウンスする女性Photo: Adobe Stock

決算公告は会社法で規定されている義務

 決算公告は会社法で規定されている義務であり、さぼると過料を課せられるおそれもあるにもかかわらず、企業の大半は実施していないというのが実情です。スタートアップもご多分に漏れません。

 スタートアップ特有の理由も含めて、いくつか考えられる背景を挙げておきます。

①そもそも決算公告のことを知らない

 創業者CEOが経理経験者などでない限り、そもそも決算公告の存在や義務であることを知らないケースはそこそこあるのではないでしょうか。

②コストがかかる

 官報でも、日刊新聞でも掲載にはそれなりに費用がかかります。金銭面のコストに加え、手間というコストも無視できません。たとえば電子公告を選択し自社のウェブサイトに掲載する場合では、URLの法務局登記が必要で5年間の継続掲載義務があるなど、制約が多くなっています。

③掲載期限が定められていない

 定時株主総会の開催後「速やかに」との規定はあるのですが、明確な期限はありません。スタートアップはリソースが限られやることも無限にあるので、上記②も相まって処理すべき事項としていつまでたっても優先順位が高くならないため対応が進まないということなのでしょう。

④財務情報を対外公表したくない

 官報や日刊新聞掲載を選択した場合、掲載内容は(大会社でない限りは)貸借対照表の「要旨」のみですが、その他利益剰余金や当期純利益(損失)などが含まれ、過去に利益が出ていたか、直近の決算期で利益が出たのかどうかがわかります。スタートアップの多くは赤字のため、わざわざそのことを公表するのは信用上逆効果と思う経営者も多いのではないのでしょうか。

 ①~④の複合要因に加え、周囲を見渡しても決算公告を行っていない企業が多いことから、「赤信号みんなで渡れば怖くない」という状況です。フェーズが進み、監査法人が入ったり投資家から法務DDを受けたりすると決算公告を実施するよう指摘されますので、適法な経営の一環として早期から対応しておくにこしたことはないと考えます。