「頭がいい子」の親がしている1つの習慣Photo by Adobe Stock

新型コロナウィルスの影響で、世の中が大きく変わりつつある。そんな変化の激しい現代において「子どもに何をしてあげられるか」と悩んでいる親は多いのではないだろうか。
そこで、これまで教育を軸に取材を重ねてきた著者が、教育学から心理学までさまざまな資料や取材を元に、「家での勉強のしかた」から「遊び」「習い事」「運動」「食事」まで、子育てのあらゆるテーマをカバー、「いま、最も子どものためになる」ことを『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』(加藤紀子著)にまとめた。
発売早々、高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題騒然の1冊だ。本稿では、特別に本書から一部を紹介する。

1つの習慣「上手に『くりかえし』をさせてあげる」

 私たちはよく、勉強だけでなく、スポーツや楽器などでも、「何度もくりかえしてコツコツ努力すれば、できるようになるよ」と子どもを励まします。

 世界的ベストセラーとなったマルコム・グラッドウェルの著書『天才!成功する人々の法則』(講談社)では、どんな分野でも約1万時間取り組めば、その分野の一流になれるという「1万時間の法則」が有名になりました。

 ところが心理学の研究によると、ただやみくもにくりかえせばいいわけではないことがわかってきました。

 くりかえしによって習得するという学習法には、いくつか注意すべき点があることが明らかになっています。では、上手に「くりかえし」をするにはどうすればいいのでしょうか?

「単調な反復」は効果なし

 問題集を何度もくりかえして勉強したはずなのに、なぜかテストで大失敗……。そんな経験はないでしょうか?

 じつはこれが、単純な反復学習の落とし穴です。心理学では「流暢性の罠」と呼ばれるものに引っかかった状態です。

「流暢性」とは、情報を適切にすばやく処理し、アウトプットする能力です。ところがこの「解き方がすぐに思い出せるくらいやりこんだから大丈夫」との思い込みが、かえって脳を油断させ、記憶したことをすぐに思い出せないという状況に陥らせてしまうのです。

「変化」を織りまぜる

 アメリカのウィリアムズ大学の心理学者、ネイト・コーネル准教授らの研究では、反復練習に少し変化を加えた課題を混ぜると学習能力がアップし、記憶が長期的に定着することがわかりました。日々の学習に過去に学習した単元なども混ぜると良いということです。

 子どもは問題に応じて解き方を考えなければならなくなるので、一見すると非効率に思えるのですが、トロント大学の心理学者、マイケル・インズリット教授は「秩序を乱す何か、その場にそぐわない何かを目にすることが、事実上、脳を目覚めさせる」と指摘しています。

 問題にバリエーションを加えた学習法で、それぞれの「違い」を意識しながら理解すると、特徴をはっきりとつかめるようになるほか、本番での思わぬアクシデントにも強くなるそうです。

「少しだけレベルアップ」させる

 フロリダ州立大学の心理学者、アンダース・エリクソン教授は、あらゆる分野の超一流の人々は、「自分にとって居心地のいい領域(コンフォート・ゾーン)から飛び出し、少しだけ限界を超える負荷をかけつづけている」という「限界的練習」理論を唱えています。

 世界中の超一流の人々を30年以上にわたって研究してきたエリクソン教授は、「私たちは誰でも、この『限界的練習』をくりかえすことによって、まわりの人から見れば『生まれつきの才能』にしか思えないほどの、並外れた能力を獲得することができる」といっています。

 もちろん、新しい単元やテクニックを学ぶには、くりかえしの練習によって慣れていくことは欠かせませんが、そこに変化を混ぜること、少しの負荷を加えてやることが重要だということです。

(本原稿は、『子育てベスト100──「最先端の新常識×子どもに一番大事なこと」が1冊で全部丸わかり』の内容を抜粋・編集したものです)

参考文献

ベネディクト・キャリー『脳が認める勉強法 「学習の科学」が明かす驚きの真実!』(花塚恵訳、ダイヤモンド社)
ピーター・ブラウン、ヘンリー・ローディガー、マーク・マクダニエル『使える脳の鍛え方 成功する学習の科学』(依田卓巳訳、NTT 出版)