大まかに言うと、以下のようなプロセスだ。

(1)金融緩和で円安になり、財の輸出が有利になるとともに、賃金水準の低下が起こり、労働への需要が起こる。当初、「勤労者」の実質所得は低下する
(2)失業率が低下する。限界的な(失業していたり、失業しそうだったりした)労働者が助かる
(3)同時に株式や不動産などの資産価格が上昇し、資産を持つ富裕層は資産の値上がりを享受できる
(4)望ましいインフレ率を達成し、実質金利が低下して経済活動が拡大すると、やがて「勤労者」の所得向上にもお金が回るようになる(「トリクルダウン」)

(1)、(2)、(3)は、それなりに実現した。特に、労働市場の「弱者」層が救済されたことは、評価していいだろう。

 しかし、(4)は二重の意味で実現しなかった。全般に財政政策による後押しが不十分で、しかも消費税率の引き上げのような逆効果の政策が足を引っ張ったために、インフレ目標は達成できなかった。

 加えて、「富裕層」の欲望が十分満たされないと「勤労者」へのトリクルダウンが起こらず、しかも彼らの欲望が腹一杯になるような限界が少しも見えてこない現実の仕組みが明らかになってきた。

 なお、ここで、カギ括弧付きで「勤労者」と書いた対象は「安定した職を持っているが資本を持っているわけではない、サラリーマンないしフリーランスの“働いて生活する人”」だ。

コロナが持つ
2つの「中間層破壊効果」

 2度目の消費税率引き上げのおかげで、アベノミクスがいわゆる「腰折れ」したかに見えたところに、コロナがやって来た。トリクルダウン待ちだった中間層の勤労者は、いわば「おあずけ」を食らって、その後に生活・経済の環境が大きく変わった。誰か一人を責められるものでもないが、「待ったあげくが、これかよ」と言いたくなる方もいるだろう。