鳩山内閣が閣僚・党役員人事を行った。公約通り「脱・官僚支配」の姿勢を明確に打ち出した人事である。新閣僚が大胆な政策転換を次々と明言することにも注目が集まっている。
しかし、これまで民主党のことをよく調べもしないで、「国会を麻痺させている」と一方的に批判してきた方々(第4回)が鳩山内閣の解説をしていることには違和感がある。今回は、それらと一線を画し、野党時代の民主党「ネクストキャビネット(次の内閣)」との「継続性」に留意しながら、鳩山内閣について考えたい。
「鳩山人事」にはこれまで野党として官僚組織と対峙してきた経験がよく反映されている。例えば、菅直人国家戦略相の経済財政相兼務である。国家戦略局のスタッフ機能をどう確保するかは重要な課題だが、菅国家戦略相が経済財政相と兼務し、これまで経済財政諮問会議などの事務局を務めてきた内閣府・経済財政部局の官僚約300人を傘下に収めることで現実的な解決を図った。
鳩山内閣は、官僚排除と諮問会議廃止を訴えながら、その諮問会議が構築してきた事務局機能をそのまま頂こうというのだから、なかなかしたたかである。
民主党のしたたかさは、閣僚・副大臣・政務官の配置の随所に見られる。まず、藤井裕久財務大臣。15年ぶりの復帰であり、55年体制以後の非自民政権の財務相(蔵相)は藤井氏だけという「絶対的な存在」である。しかし、一度は政界引退を表明して第一線から退いていた方である。民主党には中堅の金融財政通が育ち(第9回)、政策立案の面では人材難ではない。しかし、藤井氏は大蔵省出身かつ非自民政権唯一の蔵相経験者で財務官僚の信頼も厚い。「リーダー」として「絶対的な存在」なのだ。
鳩山内閣では、岡田克也外相、赤松広隆農水相、直嶋正行経産相、川端達夫文科相、そして亀井静香金融・郵政担当相と福島みずほ消費者・少子化担当相と、代表、副代表、幹事長、政調会長などの要職を歴任し、官僚組織とも人脈がある「リーダー」が閣僚に配置された。閣内最年少の前原誠司国交相にしても民主党代表経験者なのだ。