世界貿易機関(WTO)の「リセット」について、国際的な合意が形成されつつあるようだ。それにはもっともな理由がある。この国際的な貿易システムは、極めて不平等な関税、一部の国には適用され他国には適用されないルール、そして往々にして保護主義を盛り込み最恵国待遇というWTOの中核原則を損なう多くの「自由貿易協定」へと形を変えた。一方、WTOの紛争解決制度は交渉よりも訴訟が報われる仕組みになっており、多くの場合、WTO加盟国が合意した規定とはかけ離れた法体系を作り出そうとしている。なぜこのような現状に至ったかを振り返ってみることは有益だろう。第2次世界大戦後、「関税および貿易に関する一般協定(GATT)」を通じて新たな世界貿易体制が確立された。このシステムは根本的に「無差別の原則」に基づいており、それはGATT加盟国に互いを平等に扱うことを義務付ける最恵国待遇ルールにつながった。加盟国はまた、貿易を自由化し市場改革を促す新たなルールについて将来的に協議することにコミットしていた。
【寄稿】WTOをいかに改革するか=米通商代表
全加盟国に平等にルールを課す「無差別の原則」に立ち返るべき
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