ターゲット世代越境型商品。右から、「クロレッツ スパークオン デイライトミント」、「アサヒ スーパードライ ドライブラック」、「キリン メッツ コーラ」。

 消費者の財布の紐は、依然固い状態が続いているようだ。第一生命経済研究所が刊行した『ライフデザイン白書2011』によると、「よく考えてからモノを買うようにしている」と回答した人が、2005年の52.9%から2010年は59.5%に増えている。長引く不況に加え、震災後はその傾向がより進んでいる模様だ。

 商品を供給するメーカーにも、消費を刺激する新しい発想が必要となる。そんななか、最近目立ち始めているのが、従来のターゲット世代とは全く異なる層を狙った、いわば「ターゲット世代越境型商品」だ。

 まずは、日本クラフトフーズが6月25日に発売を開始した「クロレッツ スパークオン デイライトミント」だ。1985年発売のロングセラーブランドであり、従来は30~40代男性を対象としてきたが、新商品では20代男性に照準を合わせた。2枚のガムをソフトキャンディで挟む3層構造で板状の「スラブガム」にして、パッケージも折りたたみ式の「ウォレット形状」にするなど、若者好みの商品に仕立てている。

 アサヒビールが4月3日に発売した「アサヒスーパードライ ドライブラック」もよい例だろう。1987年デビューの「アサヒスーパードライ」は30~50代の男性が主なターゲットだったが、ドライブラックは、20~30代の若い世代に的を絞った。黒ビールでありながらスッキリとした味わいにし、テレビCMには若者に人気のダルビッシュ有を起用。戦略は当たり、6月末までに累計170万箱(大瓶換算)を売り抜くと共に、年間販売目標を当初の200万箱から300万箱に上方修正する人気ぶりだ。

 キリンビバレッジから4月24日に発売された「キリン メッツ コーラ」も挙げられる。1979年に登場した「キリン メッツ」の従来の顧客層は、10~20代の男女。それに対し、「キリン メッツ コーラ」では、食事の際の脂肪吸収を抑える難消化性デキストリンを配合して特定保健用食品の認可を受け、30~40代男女を新たなターゲットとしたところ、大ヒット。発売直後に年間販売目標の100万ケースを超え、一時供給が追い付かなくなり、7月には目標を6倍の600万ケースと大幅に上方修正した。

 越境してくる新商品をターゲットと見なされた層がすんなりと受け入れ、人気となる理由は何か。第一生命経済研究所の宮木由貴子主任研究員は、「ロングセラーブランドの持つ“安心感”により、消費者がトライするにあたってのハードルを下げることができている」と分析する。その最初の関門をクリアしたことで弾みが付き、ヒットにつながっているというわけだ。

 さらに、ターゲット世代越境型商品の背景には、従来対象としていた世代の高齢化や、様々なジャンルにおける若者離れなどの影響があるという。本来なら新ブランドを立ち上げるのがセオリーだが、リスクが大きい。

 その点、ロングセラーのサブブランドであれば、もともとブランドが持つ認知力や技術力を大いに利用できる。まさに企業にとって「安全で確実な手法」(宮木氏)というわけだ。

 ただし、既存ブランドのリソースが活用できても、肝心な味や機能などの中身が、ターゲット世代にマッチしなければ、当然そっぽを向かれる。現に、失敗するサブカテゴリーも少なくない。いかに綿密にマーケティングをして、その世代好みの商品に“化けさせられる”かが、勝負の分かれ目と言えるだろう。

(大来 俊/5時から作家塾(R)