インテリアデザイナーのジョイ・バン・ディーさん(42)は、アムステルダムから空路12時間かけてシンガポールに到着したとき、政府が指定した施設で幼い息子と2週間の強制隔離生活を送ることに恐れを抱いていた。だがそれはシャトルバスが5つ星ホテル「ザ・リッツ・カールトンミレニア・シンガポール」に停車し、川を見晴らす約51平方メートルの豪華な部屋に連れて行かれるまでだった。「私たちは大当たりを引いた」。最後の瞬間まで目的地を知らされていなかったバン・ディーさんはこう話す。シンガポールの検疫はまるで宝くじだ。同国では新型コロナウイルスの検疫のため、大半の入国者はホテルの部屋で14日間過ごさなければならない。どのホテルに行くかを選ぶことはできず、空港から旅行客を運ぶシャトルバスの運転手はどこに向かうかは教えてくれない。