製造業が必要とした5要素の人間

もう一つは、高学歴です。

製造業は「低学歴」産業です。

全世界の製造業の従業員を100とすれば、大卒以上の人は4割もいません。

ユニコーンの管理職のほとんどは、ダブルドクター、ダブルマスターです。

世の中にないものを新しく生み出そうと思ったら、高学歴の人や一芸に秀でた人が、とことん好きなことを極めるしかないわけです。

製造業が必要としたのは、次の5要素の人間です。

1 偏差値がそこそこ高い
2 素直である
3 我慢強い
4 協調性が豊かである
5 先生や上司のいうことをよく聞く

というと、みなさんは「なかなかいい奴じゃないですか」と思う人が多いかもしれません。確かにいい奴です。

でも、こういう人たちから将来のスティーブ・ジョブズが生まれるかという問題です。

製造業ならこれでいいです。でもユニコーンは生まれない。

日本は低学歴国です。

まず、大学進学率が五〇数%で、OECD平均より7ポイントほど低い。

大学で勉強しないのは、企業の採用基準に成績がないからです。

さらに大学院生を大事にしない。

なまじ勉強した奴は使いにくいといっている人事担当者が未だにいます。おかしいでしょう。

関西学院大学の村田治学長(1955-、専門はマクロ経済学、景気循環論)の論文によれば、労働生産性とその社会のドクター保持者の占率は比例するといいます。

アイデア勝負の時代になったら、好きなことを極めたオタクが多い会社のほうが面白いアイデアが出るに決まっています。なぜこんな当たり前のことがわからないのでしょう。


続きは次回にしましょう。

過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。