視野を狭くして言うと、米国民にとっての喫緊の課題は、最高裁判事の後任人事とその行方が選挙にどう影響するかだ。だが、より広範な問題の方がおそらく重大な意味を持つだろう。最高裁をはじめとする米国内のあらゆる機関が、持続的に政治的圧力を受けるこの時代をどう乗り切るかという問題だ。米機関の立場と社会における役割はここにきて、政治的圧力に脅かされている。もちろん、最高裁が政治から完全に切り離されていたことはこれまで一度もない。だが、ルース・ベイダー・ギンズバーグ判事の死去に伴う後任人事を巡る攻防は「最高裁の政治化」の時代がその極みに達していることの表れとも言えそうだ。米国では1987年、民主党が最高裁判事に指名されたロバート・ボーク氏の人事案を阻止する方向に動いたことで、「政治化」時代の幕が開けた。
米最高裁「政治化」の代償、広がる制度不信
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