ネット上の自分は「虚」
「実」の強化を大事にする

――たとえば攻撃的なリプライ・返信を読むとへこみますよね。それで傷ついて、うつになったり、最悪の場合は自殺してしまったりするケースもある。田端さんは、こうした返信にどう対応されていますか。

 僕はこう考えてます。SNS上の田端信太郎はアバターなんだと。影なんだと。その影がいくら攻撃されようがナイフで刺されようがバズーカで吹き飛ばされようが、僕自身は影を踏まれてるようなもので、「ふーん」って感じになれるんです。ネット上の自分は「虚」なんですよ。ウェブ上の自分を生身の自分と一体視して傷つく心ってわかりますけど、「虚」として突き放せば、また違ってくる。これってSNSだけじゃないですよね。今こうしてインタビューされてる内容だって、「田端すげぇ」って記事になるじゃないですか(笑)。でも、たとえばフリーペーパー「R25」を立ち上げた時だって、メディア的には「田端すげぇ」でしたけど、実際は事業計画通りに仕事がいかないとか、上から怒られるとか、代理店やクライアントとモメるとかしてたんです。それが本当っていうか「実」であって。

――ご著作『これからの会社員の教科書』で会議は基本的にムダと書いていましたが、会議もやらざるを得ない。また『ブランド人になれ!』にもあるとおり、家に帰った田端さんは、妻や子どもにとっては普通の夫であり親になるんですよね。それが「実」で、ブランドはある意味「虚」といえる。

「虚」と「実」を混同すると、きついと思います。それに、「虚」だと思えたとしても「本当の自分(=実)はそうじゃない」ってなると思う。僕がその点で大事にしてるのは、「実」を強化することです。家族とのやりとりで「うお!」ってなったり、サウナに行ったりサーフィンしたり。それはそのまま「虚」から離れることになっていくんです。「実」の感覚が最大になる時って、たぶん「死ぬかも」って時だと思うんですけど、たとえばサーフィンで波に巻かれてテトラポットに突っ込んだ時に、「いま俺ネットで炎上してるからな……」なんて思わないじゃないですか。炎上なんてどうでもよくなる。そこですよね。

――そういったことに気をつけつつ、あとは田端さんのお好きな『徒然草』の「能をつかんとする人」になれってことですね。

 そうそう。うまくなってから始めるんじゃなくて、まず始める。で、『徒然草』でいえば、特にうまい人たちの中に飛び込んで、けなされて笑われていくこと。そうしながら、うまい人のことをとにかく真似る。徹底的にコピーする。すると、真似すれどもすれども重ならない、真似にならないところがわかってくる。それが個性ですよ。オリジナリティですよ。ぜひ、この記事を読まれた方は、さっそく始めてみてください。