渋谷駅前で150人ほどのタイ人が集まり、政府に反対する声を上げた渋谷駅前で150人ほどのタイ人が集まり、政府に反対する声を上げた
渋谷駅前で150人ほどのタイ人が集まり、政府に反対する声を上げた

タイ本国の大規模デモに
呼応して世界各地で敢行

 プラユット氏は陸軍司令官だった2014年、軍を率いてクーデターを起こし、政権を掌握、首相の座に就いた。2019年には民政移管の総選挙が行われたものの、軍事政権を支持する「国民国家の力党」が与党となり、プラユット氏はそのまま首相として続投。軍と政治が癒着した7年の間に、言論の自由は失われ、抗議する声は封殺されてきたとタイ人たちは訴える。

 国民の不満が鬱積していたところにコロナ・パンデミックが直撃。タイはこれまで、感染者3506人、死者59人(9月20日現在)と、コロナを封じ込めた国のひとつではあるが、世界に広がった入国制限のため観光客が激減した。

 GDP(国民総生産)の2割を観光に依存し、さらにコロナ禍による世界的な需要の落ち込みで製造業も不振にあえぐタイでは、今年の上半期だけでも250万人が失業したともいわれ、政権への批判が強まっている。

「そんなときに国王はタイにはおらず、ドイツで悠々自適の暮らしを送っています。その費用はすべてタイ人の税金です」

 渋谷デモに参加した主婦だというタイ人女性は憤る。

 いまタイで激化し、世界各地にも飛び火した今回のデモは、反政府の主張に加えて、これまでは絶対的な「タブー」だった王制改革を訴えていることが特徴だ。

渋谷駅前を通る日本人に日本語でアピールする参加者の女性たち渋谷駅前を通る日本人に日本語でアピールする参加者の女性たち
渋谷駅前を通る日本人に日本語でアピールする参加者の女性たち

絶対のタブーだった王室に
反対するパフォーマンスも

 前国王の崩御を受けて2016年に即位したワチラロンコン現国王は、結婚・離婚を繰り返す派手な女性関係や、全身刺青(タトゥー)、極端に丈の短い女性もののタンクトップという奇抜なファッションでも知られる。

 常に国民に寄り添った前国王とは正反対で、一年の大半をドイツの別荘で過ごし、加えて自身の権力基盤を強化し、王室の財源の独占も進めてきた。しかしタイには最長で禁固15年という不敬罪があるため、これまで表立って批判することはできない存在だった。

 しかし今年3月、滞在先ドイツのタブロイド紙がスクープを報じた。国王が20人の愛人を伴ってドイツ国内の超高級ホテルを貸し切り「コロナ疎開」をしているというものだ。

 この件が引き金となり、タイ国民はとうとう「タブー」に手をかけるようになった。タイで8月に続き行われた9月19日の大規模デモでは、王制改革の要望書を政府に突きつけたのだ。