9月14日(月)の自民党総裁選は、菅義偉官房長官の圧倒的勝利で終わった。16日(水)、菅氏が首相に選出され、新閣僚の任命が終わり、現在のマスコミの興味は新閣僚の品定めとこれからの政策に移った。菅氏の勝利は党内5派閥が支持したからだといわれているが、果たして、本当にそれだけだろうか。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
起きていないことと起きていること
自民党総裁選で、菅氏はアベノミクスを継承し、前進させると言い、岸田氏と石破氏は格差が拡大、低所得者層の雇用・所得向上が大事だと訴えた。また、財政政策では、菅氏はコロナ禍で最悪の経済を支援することが全てであると述べ、岸田・石破氏は現在の財政出動の必要性を認めながら、将来の財政健全化を唱えた(「アベノミクス後競う」日本経済新聞社9月13日朝刊)。
しかし、すでに本連載で2回にわたって書いたように(『アベノミクスへの辛口評価は根拠なし、景気実感は実は改善している』 2020.9.14、『アベノミクスの代名詞「大胆な金融緩和」は日本経済に何を遺したか』2020.8.31)、コロナ以前、アベノミクスによって格差は縮小し、財政は健全化していた。
岸田氏と石破氏は、格差拡大のような起きていないこと、財政破綻のような起きるかもしれないことへの批判をしたのだが、菅氏は起きていることを継承し、さらに前進させると言った。自民党員は、実際に起きていること、すなわちアベノミクスのもたらした経済の改善を実感して総裁を選び、地方票を含め、菅氏の圧倒的勝利になったのだろうと筆者は思う。