「菅内閣」誕生で政治はどう動く?自民党総裁選の内幕を伊藤惇夫氏が斬る自民党総裁選への出馬を表明する菅氏。これから政治はどう動くのか 写真:つのだよしお/アフロ

来る9月14日、自由民主党の総裁選が実施される。7年8カ月に及んだ安倍政権は、功績と共に多くの課題を残した。次期自民党総裁には新しい首相として、難しい国の舵取りが求められる。総裁選における「菅一強」は揺るがないのか。新政権のもとで解散・総選挙はいつ行われるのか。注目すべきポイントを、政治アナリストの伊藤惇夫氏に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 副編集長 小尾拓也)

雪崩を打って「勝ち馬」に
自民党内で勢力図が一変

――安倍首相の辞任を受けて9月14日に実施される自由民主党の総裁選は、候補が3名に絞られました。現段階では、党内5派閥の支持を受けた菅義偉・官房長官が圧倒的に有利な状況です。各派閥が雪崩を打って「菅支持」に回ったのは、なぜでしょうか。

 ひとことで言えば、「勝ち馬」に飛び乗ろうとする動きが起きているということ。しかし、なぜ菅氏が急速に「勝ち馬」と認識され始めたのかは、定かではありません。強いて言えば、「石破茂・元幹事長だけは総裁にしたくない」という考えが、党内で強かったのでしょう。それが一番大きな理由だと思います。

 一方で、次期総裁の本命とされてきた岸田文雄・政調会長が失速した影響もあります。6月を境に安倍首相が方針転換し、岸田氏は後継候補から外れたと見られています。理由は、新型コロナ対策で党の責任者を務めたにもかかわらず、発信力・存在感が高まらないから。また、コロナ支援策として岸田氏が主張してきた、30万円を減収世帯に限定給付する構想が閣議決定後に覆され、国民への一律10万円給付に変更された一件で、岸田氏の政治手腕には大きなマイナスイメージがついてしまいました。

 興味深いのは、この頃から麻生太郎・副総理も「岸田は平時の宰相だ」と言い始めたことです。過去、金丸信・副総理が将来の総裁候補について述べた「平時の羽田(孜)、乱世の小沢(一郎)、大乱世の梶山(静六)」という発言に倣ったのでしょう。

 実はこの発言、それで終わりではなくて、金丸氏は「政治の世界に平時はない。そして大乱世になったら自民党はない」と付け加えました。要するに、「総裁候補は小沢一郎しかいない」と言いたかったわけです。麻生氏がそこまで考えて金丸氏の発言を引用したとすれば、「岸田氏では無理だ」と言いたかったのかもしれません。