安倍政権の経済成果は、財政状況を改善したことだと本連載の前回『アベノミクスの代名詞「大胆な金融緩和」は日本経済に何を遺したか』で書いた。その際、読者が意外に思う事実を書きたかったのだが、今回は多くの人が既に成果として述べていることをきちんと整理してみたい(ここで述べる成果は、コロナ以前のことである)。それらは雇用の改善、企業収益と雇用者所得の拡大、実質と名目GDPの増加、景気の実感の向上、所得分配の改善、自殺の減少、TPP-11の締結などである。(名古屋商科大学ビジネススクール教授 原田 泰)
雇用の継続的な改善
図1は、失業率と有効求人倍率の推移を示したものである。安倍政権以前、4%を超えていた失業率は、2019年末には2.2%にまで低下した。
雇用の改善は大都市だけのものではない。全国で有効求人倍率は上昇した。「仕事があっても非正規ばかり」という指摘があるが、パートを除いた有効求人倍率も14年12月以降は1を超え続けていた。
若者の就職状況は急激に改善した。若者を食い物にするブラック企業などという言葉はほとんど聞かれなくなった。一度ブラックと噂されれば採用できなくなるからである。