ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
コンテンツ業界キャッチアップ

現在の売上本数は前作の8分の1程度
「ドラクエX」のオンライン化は失敗だったのか?

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]
【第34回】 2012年9月20日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
5
nextpage

 アイテム課金型のオンラインゲームやソーシャルゲームでは、ドラクエXにおける元気玉(※)のような「ゲームプレイを有利にする消費アイテム」を有料で販売していることが多い。ヘビーユーザーが「同じデータをユーザーが何度も買ってくれる」という、ある意味では理にかなった方法に対して、高額な料金を支払っているケースはかなり多い。とはいえ、ユーザーが全員、納得して料金を支払っているとは到底思えないが……。

国民的ゲームの「ドラクエ」だからこそ、
求められる厳しい健全性:
ダイス騒動から考えること

 もっといえば、小学生の子どもまで遊ぶ家庭用ゲームは料金の支払いに対する「ユーザーの納得度」に対して敏感だ。付加価値がかなり高い追加シナリオやアイテム以外のダウンロード販売は、行わない方が国民的ゲームとしてのブランド価値を下げずに、高収益なビジネスができるはずだ。

 ドラクエXでは様々なプレイヤーが遊んでいる。筆者の場合、一緒にパーティを組んだ相手が11歳の小学生だった。その子どもが「お母さんがカルピスを作ってくれたので、飲んできます」と言って離席したときには思わず微笑んだのはよい思い出である。PCオンラインゲームはダメでも、「ドラクエなら」ということで遊ぶことを許す親御さんも居るのだろう。

 それ以外にも「ドラクエだからオンラインゲームを始めた」という、ドラクエXがオンラインゲームデビューとなった私のような初心者も多数いるはずで、ドラクエXの運営は他のオンラインゲームより数段難しくなっていると考えられる。

 つまり、従来のオンラインゲーマーが持つ“常識”が力を持ち得ない状態で、ドラクエXのゲームサーバは運営されているということになる。その状態で発生したのが、いわゆる「ダイス騒ぎ」である。

(※)元気玉……ログインしていない時間が22時間毎に無料でもらえるアイテム。使うことで、手に入る経験値やお金が30分間2倍になる。「ずっとログインしてプレイし続ける」という、いわゆるネトゲ廃人化が社会問題化しているが、ドラクエXではログアウトしている時間もゲームにプラスになる仕組みとして「元気玉」と「サポート仲間」システム(酒場で登録してログアウトすることで、ログアウト中に誰かにパーティに呼ばれると経験値とお金が手に入る仕組)をゲームデザインに組み込むことで、ネットゲームとユーザーの距離に関する新しいあり方を提唱している。

previous page
5
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

小山友介
[芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

コンテンツ業界キャッチアップ

ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

「コンテンツ業界キャッチアップ」

⇒バックナンバー一覧