国籍を理由として「勝手に死ね」という運用が行われる可能性は、生活保護の対象を「日本人」とした1950年の時点で、当時の厚生官僚たちが警戒していた。人道上の問題であるだけではなく、その外国人の出身国や国籍国との外交、さらに国際社会の中での日本の立場にも悪影響を及ぼす可能性があるからだ。

「現在、多数の外国人留学生が日本に滞在しているのは、『30万人』を目指して誘致する政策によるものです。さらに、留学生のアルバイトがコンビニエンスストアや飲食店の人員不足を支えてきた側面もあります。このような事情がありながら、困窮する外国人留学生を放置することは、日本に対する国際的評価を下げることになりかねません。外国で活動する個人や企業の活動も、妨げられる可能性があります。回り回って、我が国への不利益を生じさせるものだと考えています」(太田さん)

国と人々の未来を取るのか
近視眼的な“国益”を取るのか

コロナ禍に喘ぐ外国人留学生、住居費支援に迫る期限切れと世間の冷たい風本連載の著者・みわよしこさんの書籍『生活保護リアル』(日本評論社)好評発売中

 日本の政策施策は、時に、日本人への思わぬ“しっぺ返し”となる。2019年12月、アフガニスタンで殺害された中村哲医師の事例は、まだ多くの人々の記憶にとどまっているはずだ。ビジネスの世界においてまで、「日本人だから襲う」「日本人だから助けない」という態度が“グローバル・スタンダード”となったら、日本と日本人に未来はないだろう。

 外国人への生活保護適用が制約されている現実は、どう変えればよいのだろうか。

「準用の範囲を広げるためには、法改正までは必要なく、行政解釈の変更で可能です。国は、迅速に対応すべきです」(太田さん)

 パンデミックを想定していなかった時代の法律や通知で、パンデミックに立ち向かえるわけはない。外国人と生活保護に関する論点の数々は、まずこの視点から整理する必要がありそうだ。

(フリーランス・ライター みわよしこ)