初対面での話題のタブー
「三脱(さんだつ)の教え」

 この「江戸しぐさ」の中に「三脱の教え」というものがあります。「三」とは「年齢」「職業(肩書き)」「地位」のこと。昔の日本には、初対面の人に相手のプライベートに関することを聞いてはならないというルールがあったのです。

 では、なぜそのような教えがあるのでしょうか? 

 実はその3つのことに人がこだわりを持ってしまうと、先入観でその人を見てしまいがちだからです。国際儀礼でも同様に、初対面の人にこの3つを聞くことは避けるようにと言っています。なぜなら「互いに一人の人間同士として向き合い、その人自身を見る」ことを理想としているからです。

 日本人は江戸時代から国際儀礼と同じ精神とルールを身に付け、実践していたのですから、なんと誇らしいことかと思います。色眼鏡で他の人を見るのは良くないことであり、また、自分一人の尺度で他の人を評価したりすると、ときに真実を見誤ることがあると注意を促すのは、やはり世界共通です。

 もしも初対面の人が、あなたの年齢や職業を尋ねてきたら、なんだか厚かましい印象を受けて、あまりいい気持ちはしないのではないでしょうか。そして、「気配り」が欠けている、と思ってしまうかもしれません。

 表面的なことにとらわれずに、相手と会話を楽しむためには、自分自身が教養を身に付けることも大切です。話題は記憶から生まれるものなのですから。様々な分野のことを話題にできるようになれば、三脱の教えも自ずとできることでしょう。


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