「自分が決めたことを淡々と続けられる人」が無意識に考えていることとは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。数々の成功者に接し、自らの体験も体系化し、「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。
コロナ後の生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。『ゆるストイック』では、新しい時代に突入しつつある今、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、「私自身が深掘りし、自分なりにスッキリ整理できたプロセスを、読者のみなさんに共有したいと思っています」と語っている。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

「自分が決めたことを淡々と続けられる人」が無意識に考えていること・ベスト3Photo: Adobe Stock

決めたことを淡々と続けられる人

 あなたは、自分が決めたことを淡々と続けられますか?

 仮に、あなたがやるべき方向性が定まったとしましょう。
 その上で、「才能と運が支配する世界」で、私たちがどのように努力を続けていけばいいのか

■ 自分に配られたカードを知る
■ 活動に没頭する
■ 柔軟に変化し続ける

 この3つの軸で考えていくのがいいでしょう。
 順番に説明していきます。

1│自分に配られたカードを知る

 まずは、自分がどんなことに興味を持ち、何に快楽や苦痛を感じるのかを知ることが大切です。
 私たち人間は、生まれながらにしてさまざまな個性を持ち、物事の感じ方が人それぞれ異なります。

 他人と交流することで喜びを感じる人もいれば、一人で創造に没頭することで充実感を得る人もいます。

 人間は、環境の変化に適応し生き延びるために多様性を持って生まれてきます。

 しかし、自分がどんな個性を持っているかは、試行錯誤を繰り返さないと見えてきません

 ちょうど、頭の上にトランプのカードを掲げて生きているようなものです。
 他人に配られたカードはよく見えるけど、自分に配られたカードは自分からは見えません。
 他人との交わりや社会との関わりの中でようやく、

「自分に配られたカードはおそらく〇〇だろう」

 と、当たりがつけられるようになります。

 わかりやすい強み(頭がいい、顔がいい、話がうまい……)が見つからなくても、落ち込む必要はありません。

 他人と自分の違いさえわかれば、戦略は立てられます

 自分の個性を知るには試行錯誤を通じて、

「自分では特にがんばったつもりはないが、周りからよく褒められること」

 を見つけることが近道です。

 たとえ、それが些細なことであっても、自分にとって苦痛なく続けられることであれば、「独自性」を発揮するきっかけになります

 子どもの頃、何かに興味を持ち、その活動を親や周囲から褒められると、脳は「報酬」を感じる仕組みが働きます。

 この反応は、次第に「好み」や「個性」として形作られます
 そして、大人になってからの行動や考え方に大きく影響します。

 幼少期にできたこの「脳のプログラム」を変えるのはとても難しい行為です。
 それに抗うことは、やめたほうがいいでしょう。

 むしろ、自分が無意識にしてしまう習慣をうまく活用して、社会で自分らしい基盤を築くほうが賢い戦略なのです

 つまり、自分の「持ち札」を理解することが、人生をうまく進めるための第一歩なのです。

2│活動に没頭する

 己を知ったあとは、目の前のことに集中しましょう。
 とはいえ、スマホの影響もあって、どんどん集中できないようになっています

 子どもの頃は、何かに夢中になることが当たり前だったはずです。
 というのも、脳は目の前のことに没頭することで充実感を感じるように設計されているからです。

 大人になると忙しさで忘れてしまいがちですが、何かに没頭することは、脳にとっての「リフレッシュ」にもなるのです

 脳には「デフォルトモードネットワーク(DMN)」という領域があり、ここがずっと覚醒していると、疲弊し、何かを考えることに忙しくなってしまいます。

 そして、その状態がずっと続くと、注意が散漫になり、不安を感じるようになったり、精神的な不調を引き起こすこともあります。

 興味深いことに、何かに没頭しているときはDMNの活動は低下し、サウナや瞑想をしているときと同じように、脳がリラックスした状態になります。

 だから、意識的に何かに夢中になる時間を作ることが、心の健康にとって大切なのです

 不安や失敗への恐怖にとらわれそうになったときは、目の前のことにとことん没頭することです。
 没頭することで、脳を休ませれば、充実感が得られ、周りの雑音も気にならなくなります。

 成果が出るまで続けるための耐久力にもつながり、一石三鳥にも四鳥にもなるのです。
 そんな「没頭するクセ」を身につけましょう。

3│柔軟に変化し続ける

 私たちは、未来を「今」の延長で考えがちです。
 明日も今日と同じことが続くかのように思う。

 しかし、実際には社会や環境の前提が次々と変わります
「変わらないものなど何もない」という事実を受け入れ、自分自身も変化し続ける意識でいることが大切です。

 そして、世の中のチャンスは常に変化の周辺にあるので、自分も変わり続ける努力をすることでチャンスに遭遇する確率も上がっていきます

 人生は、予期しない出来事や些細な偶然に大きく左右されることが多くあります。
 それは私たちのコントロールを超えています。

 だからこそ、「自分は変化に対応できる」という柔軟なマインドを持つことで、チャンスに出合う確率が高まるのです

 それに、人生のどん底であっても、それが永遠に続くわけではありません。
 次の瞬間には思いがけない出来事が訪れるかもしれません。

 変化を受け入れ、チャンスの周辺に自分を置き続ける努力が、結果として大きな成果へとつながるのです

 以上、「己を知り、没頭し、変化し続ける」という、この3つの軸で努力を重ねることで、自分らしい方向性が見つかり、運と才能のバランスが取れた成長を目指せるでしょう。

 1日を積み上げる、「ゆるストイック」な生き方が実現できるのです。

佐藤航陽(さとう・かつあき)
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)を上梓した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86 をスタートさせた。