崖っぷちに立つトランプ
前回大統領選での「黒い噂」
2020年のアメリカ大統領選挙まであと1カ月というところで、トランプ大統領が新型コロナに感染するという不測の事態が起きました。ある意味で「不測の~」というのは正しくないかもしれません。トランプ大統領はマスク拒否派で、コロナに関してはずっと脇が甘かったのですから。
トランプ候補の感染のきっかけになったのではないかと言われるのが、9月26日にホワイトハウスのローズガーデンで行われた、エイミー・バレット最高裁判事のお披露目式典でした。屋外で行われたこの式典に出席した参加者は、ほとんどがマスクをせず、その中から7人がコロナの陽性になりました。
コロナ感染でトランプ候補の支持率は下がり、選挙戦は崖っぷちに立たされたようです。高熱を出してヘリコプターで病院に搬送されたトランプ候補は、未承認の治療薬の投与を経て10月5日にはホワイトハウスに戻り、立て続けにツイートを投稿して健在をアピールしていますが、かなり微妙な状況に追い込まれたことは間違いないでしょう。
さて今回は、トランプ候補が多用するツイッターなど、SNSについての話をします。実は、トランプ氏が当選した2016年のアメリカ大統領選挙が、操作されたのではないかという疑惑があります。イギリスの選挙PR会社、ケンブリッジアナリティカによる違法選挙介入の疑惑です。
本来公正であるべき国政選挙で、SNSがどのように違法に使われたのか。そして2020年の選挙でも、似たような介入が繰り返されるのか。それを理解するために、2016年に起きたことをここで振り返ってみたいと思います。
ケンブリッジアナリティカ事件を簡単におさらいすると、イギリスの研究者経由で5000万人分のアメリカ人フェイスブック利用者の個人データを入手したイギリスの選挙PR会社・ケンブリッジアナリティカが、このデータを利用してトランプ陣営と契約し、SNS上で有権者を操作したという疑惑です。
事件の発覚を受け、2018年にケンブリッジアナリティカが事業を停止した結果、この事件の詳細は未解明に終わっています。つまり、不正行為が選挙戦に影響を及ぼしたのかどうか、公式には結論が出ていません。