中には、かつて新卒で大企業に就職した時点では、上下関係だけで物事を見る世界に違和感を覚えていた人もいるでしょう。しかしそうした人たちでさえ、大組織に適応するために「本当はこうしたほうがよいのでは」という思いを封じ込めていると、だんだん違和感を失い、思考停止に陥ります。非常に恐ろしいことです。

 かつて抱いていた違和感や思いを復活させることは、とても難しい。上下関係しか構築できない中高年が大企業で多く見られるのは、長年にわたりそうした状態に身を置いているからではないか、と思います。

環境の違いに打ちのめされても
はい上がってこられる人材か

 では、どうすれば「上下関係だけで物事を見る」悪弊から抜け出せるのか。それは結局、実際に痛い目に遭うしかないと思います。頭では横の関係が大切だと理解できたとしても、実際にそうできるかは別の話。実感できるまでには時間がかかるからです。

 大企業からスタートアップへ転職し、上下関係で組織やプロジェクトを動かそうとしてにっちもさっちもいかず、みんなからそっぽを向かれ、期待されたパフォーマンスを上げられない……。多くの人はそんな経緯をたどりますが、その先は敗れて去るか、めげずに這い上がってくるかに分かれます。

 採用する企業の立場から見ると、這い上がってくる人を採用しなければなりません。環境の違いにノックアウトされてから這い上がり、自身のポジションを築いた大企業出身者は、会社に大きく貢献できる可能性があります。スタートアップには思いもよらないような人的ネットワークを持っていたり、完成度の高い組織の強みや方法論を移植できたりするからです。

 問題は這い上がれる人材をどう見極めるか。着目すべきは、その人の「修羅場経験」です。例えば子会社に左遷されたが、そこで実績を上げて這い上がってきたような経験があるかどうか。そういう人はスタートアップで打ちのめされる経験をしても、また、這い上がってくる可能性が高いでしょう。

 もう一つは、すでにスタートアップに転職し、“痛い目”に遭い、「上下関係で物事を見る」パラダイムから転換を遂げた人です。実際、こういう人は転職市場での評価は高くなります。要するに、身をもって横の関係の重要性を実感し、旧来のパラダイムから抜け出せた人であれば、引き合いはあるということなのです。

(株式会社クライス・アンド・カンパニー代表取締役 丸山貴宏)