2020年の米大統領選挙は、4年前にも増して混迷を極めている。続投を狙う共和党候補のドナルド・トランプ大統領か、それとも民主党候補のジョー・バイデン前副大統領か。戦況が見えづらい中、トランプ陣営の大統領選挙アドバイザリーボードでもある著者が、「内側」から見た米大統領選挙の実情を解説する(著者がまとめたトランプ後の米国と中国、そして日本の未来については新刊『NEW RULES――米中新冷戦と日本をめぐる10の予測』で詳報する)。連載1回目となる今回は副大統領候補について。大統領候補は2人とも70歳を超えており、今回の大統領選挙では副大統領候補の存在感が高まっている。(中部大学経営情報学部教授 酒井吉廣)
トランプのコロナ罹患(りかん)で
副大統領の存在感が高まった
2020年の米大統領選挙は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。4年に1度の大統領選挙は、経済、社会保障、外交、安全保障、税制と大きく5つのポイントの政策案で争われますが、100年前のスペイン風邪以来の猛威を振るうこの感染症は、これらすべてに大きな影響を与えました。
そして、ドナルド・トランプ大統領も苦戦を強いられています。これは彼の対応が悪いためなのか、それとも見方を変えれば、こんな大変な環境で彼なりに頑張ったといえるのか。国民の解釈によって評価は大きく分かれています。
また今回の大統領選挙には、もう1つのポイントがあります。それは、トランプ大統領が74歳、民主党のジョー・バイデン候補が77歳と高齢なため、任期中に副大統領が大統領職を受け継ぐという可能性が、これまでよりも高いことです。特に、今月初めにトランプ大統領が新型コロナウイルスに罹患(りかん)し、その見方が一気に強まりました。
多くの米国民が暴れん坊で低人格と評価するトランプ大統領を、冷静沈着な態度でサポートするペンス副大統領がベストなのか、それとも記憶が曖昧でろれつが回らないこともあるバイデン民主党候補を補佐しつつ、クリアに発言するハリス上院議員(副大統領候補)を選ぶのか。これまでの大統領選挙以上に、副大統領の存在が戦況を左右するといえる状況なのです。