何歳までこの会社で働くのか? 退職金はどうもらうのか? 定年後も会社員として働くか、独立して働くか? 年金を何歳から受け取るか? 住まいはどうするのか? 定年が見えてくるに従い、自分で決断しないといけないことが増えてきます。
会社も役所も通り一遍のことは教えてくれても、”あなた自身”がどう決断すれば一番トクになるのかまでは、教えてくれません。税や社会保険制度の仕組みは、知らない人が損をするようにできています。
定年前後に気を付けるべき「落とし穴」や、知っているとトクする裏ワザを紹介したシニアマネーコンサルタント・税理士の板倉京先生の話題の著書「知らないと大損する!定年前後のお金の正解」から、一部を抜粋して紹介します。本書の裏ワザを実行するのとしないのとでは、総額1000万円以上も「手取り」が変わってくることも!

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「会社を作るか」「個人事業で始めるか」。

 起業をしようと思った時に、ここで迷う人も多いでしょう。

 中には、最初から迷わず会社を設立して始める人もいますが、後悔する人も多いです。

 何も考えず会社を設立していいのは、「会社にすることで得られる信用」が欲しい人です。

「取引先が会社でないと付き合ってくれない」とか「会社のほうが営業しやすい」というような場合を除き、あわてて会社を作るのは、得策ではありません。

 特に退職後の起業で、今までの会社員時代の経験や人脈を活かして身の丈で事業をしていこうというなら「個人事業スタート」で十分です。

 起業のスタートが個人事業のほうがいい主な理由には次の3つがあります。

(1)手軽に費用をかけずに始められる

(2)経理処理が簡単

(3)社会保険に加入しなくていい

 まず第一に、個人事業のほうが、トータルコストが安いことです。

 会社は、設立するのに大体30万円前後の費用がかかりますが、個人事業は税務署に「事業始めます!」という用紙を出すだけでスタートできます。

 経理処理も会社のほうが大変。個人事業の場合は、所得税の確定申告が必要になりますが、自分で申告をする人も多くいます。しかし、会社になると、しっかりとした帳簿を用意しなければいけませんし、法人税の申告書を作成するのは難しいので、ほとんどの人が税理士に依頼することになり、ここにも毎年、十万~数十万円単位のコストがかかります。

 また、会社は儲けの有無に関係なく必ず払わなくてはならない「均等割り」という地方税があります。赤字で儲けがなくても、最低7万円を必ず払わなくてはならないので、負担感も大きいです。個人事業であれば、赤字であれば所得税はかかりません。

 それ以上に負担感が大きいのが社会保険料です。

 個人事業は従業員が5人未満であれば、社会保険に加入する必要はないので国民健康保険でいいですが、会社は、給料をもらうのが社長1人しかいなくても、社会保険に必ず加入しなければいけません。

 社会保険料は、会社と従業員が半分ずつ負担することになっています。

 サラリーマンであれば、半分の負担ですみますが、自分の会社だと、自分の分は会社負担分と従業員負担分の両方を負担することになり、国民健康保険と比べて高額になる可能性が大です。

 また、年金も個人事業なら国民年金となり、60歳以上は払わなくてよくなりますが、会社だと、厚生年金の保険料は70歳になるまで負担しなければなりません。

会社を作るなら、年収1000万円を超えた2年後がいい

 スモールスタートしたはずの事業も、売上がどんどん増えていくなら、所得税より法人税のほうが安くなるので会社にすることも検討するとよいでしょう。会社設立の目安は、所得(儲け)で600万円くらいと言われることが多いですが、私は、「消費税」を基準に検討するのがいいと思っています。

 消費税は、事業をやっているすべての人が払うというわけではありません。

 消費税を払うのは、2年前の売上が1000万円を超えた時。2年前の売上が基準になるのです。事業を始めた最初の2年は、基準になる年がありませんから、仮に1000万円以上の売上があっても基本的には消費税はかかりません。

 1年間の売上が1000万円を超えた年の2年後に個人事業を廃業して、会社を設立すると個人事業者として消費税を払う必要はなくなります。

 さらに、新しく作った会社には、基準とする2年前の売上がないので、個人事業と同様、開業後最初の2年は、消費税はかかりません(会社の資本金を1000万円以上にしてしまうと初年度から消費税がかかってしまいます)。

 つまり、個人事業からスタートすることで、最高4年間消費税の支払いを免れることができるのです。消費税の負担は大きいので、この節税効果は、侮れません。

 ただし、会社にすることで余計なコストがかかることもあり、上記のタイミングが万人に最適とも言えません。会社にするか悩んだ時は、税理士に、税金だけではなく、付随してかかるコストも含めた損得のシミュレーションを頼むことをおすすめします。