周りを見渡すと、不機嫌な表情を浮かべている高齢者が、なんと多いことか。社会に、政治に、伴侶に、そして隣人に、さらには飲食店の店員にさえ、不満をぶつけたりする光景に出くわすこともある。かつて一流企業に勤めていたとか、どこそこの会社の部長だったとか、そんなことは現役を退いたら関係ない。何歳になろうと、人生を楽しみ、人生を謳歌すべき。どんな肩書きも外して、『死ぬまで上機嫌。』がいちばんいいのだ。
人生は考え方次第で、上機嫌にも、不機嫌にもなる。嫌な思いをしたとしても、「ま、いいか」「それがどうした」「人それぞれだ」と思えば、万事解決。どんな状況を目の当たりにしても「こういうこともあるだろう」と鷹揚に受け入れられる自分でいたい。『島耕作』シリーズ、『黄昏流星群』『人間交差点』など、数々のヒット作を描いてきた漫画家・弘兼憲史が「そのとき」が来るまで、人生を思う存分まっとうする上機嫌な生き方、心のありようを指南する。(こちらは2020年11月18日付け記事を再掲載したものです)
忘れてはならない、大切なポイント
もはや失敗を恐れる意識も薄れています。
若いときの失敗は身に応えます。失敗したら二度と立ち上がれないかもしれないと不安になり、一歩を踏み出す勇気を失いがちでした。
でも、僕たちの世代は、すでに失敗に対する免疫ができています。
今さら、小さい失敗を一つや二つしたところで、どうってことはありません。
過ぎ去ってしまえば、失敗はむしろ長い人生に彩りを与えるちょっとしたアクセントのようなもの。
たいがいは「ああ、そんなこともあったな」と笑い飛ばせるものばかりです。
だから、失敗を恐れて自嘲する心配なんてなく、やりたいことができます。
とはいえ、ひとつだけ間違えてはいけない注意点があります。
「やりたいことをやる」というのは、「我がままに生きる」というスタンスとは違うということ。
「今まで家族のため、会社のために粉骨砕身働いてきたのだから、誰に何といわれようと好き勝手にやらせてもらう」そんな理屈で、好き放題に振る舞うが如く、家族や周囲の人たちに尻拭いをさせているシニアもいるようです。
確かに高齢者が頑張って世の中に貢献してきたのは事実であり、敬われてしかるべきですが、「頑張ってきたのだから、どんな我がままでも許される」と思うのは、勘違いにもほどがあります。
人に迷惑をかけながら好き放題をやったら、確実にみんなから嫌われます。
嫌われながら人生を終えていくなんて悲しいし、情けないですよね。
大切なのは、他人に迷惑をかけないということ。
人に不利益を与えない範囲で好きなように生きる。
ここが忘れてはならない、大切なポイントです。