1月下旬のある金曜日、ウグル・サヒン博士のもとに悪い知らせがメールで届いた。中国で死者が発生している新型コロナウイルスに関する新たな研究で、これまで考えられていたよりも感染力が強いことが示唆されたという内容だった。この感染はパンデミック(世界的大流行)に発展する可能性があるとサヒン氏は考えた。週明けの月曜日、ドイツのバイオ製薬会社バイオンテックの最高経営責任者(CEO)である同氏は取締役会を招集し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防ワクチンの開発に着手すると発表した。バイオンテックはそれまで、次世代型がん治療薬の開発を手掛けてきた。サヒン氏はさらに、欧州と米国がロックダウン(都市封鎖)を余儀なくされた場合に備えて、4月までにヒト臨床試験を開始する必要があると付け加えた。
ワクチン開発、独バイオンテック躍進の軌跡
米ファイザーと提携したほとんど無名のドイツ企業がコロナワクチン開発で先頭集団に
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