ぼくはこの経験が相場に生きるのではないかと思い始めたのです。プロ中のプロは超一流の人材なのですが、まだ達人の域には達していません。その中で、ごく少数だけが歴史に名を残す達人になれるのです。腰痛の治療を通じて、達人の能力がいかに高いかを身をもって感じたぼくは「達人の知恵を用いれば、ライバルに勝てる」と確信しました。

 まわりのファンドマネージャーを見回すと、ほとんどは今も腰痛のままです。投資の成績は自分の生まれつきの力を頼みに世界有数のレベルにありますが、生まれついた能力がない自分の身体に関しては、あれこれ手段を講じてみるものの、実際のところなんの解決もしていないのです。彼らは資産運用以外では、いわば「素手」として人生を闘っているのです。

 持って生まれた力を中心に勝負をすれば、抜群の能力を有する人たちに負けるのは目に見えていますが、達人のノウハウが味方となれば、話は違います。頭のいい人は概して自分を過信していて、自分の考えを優先し、他人のアドバイスを受け入れようとしません。

 ぼくはそれまでも自分なりにノウハウを公式としてまとめてきました。会社の同僚レベルと競争するなら自己流の公式でも楽勝なのですが、世界を相手にするには歯が立ちません。ぼくは相場の世界での達人――立志伝中の人物のノウハウをものにすることが鍵だとわかりました。

 ジム・ロジャーズはコロンビア大学の教壇で「株はビッグ・チェンジを狙え」を強調していました。それを具体化したのが本書第3章です。ラリー・ウィリアムズはぼくにリスク管理の大切さを力説していました。第4章の売りシグナルの発想、損切りの哲学はここから来ています。第2章の新高値はウィリアム・オニールや相場古来の考え方を基礎にしています。とくに、日本古来の罫線は先人の知恵であり、侮ることはできません。

 本書の公式はすべてぼくのオリジナルですが、厳格にいえば、達人たちのノウハウを実践に即して細かく具体化し、集約したものだといえます。「できる人」は、相場の状況や銘柄の特性ごとに臨機応変に対応しているように見えますが、頭の中では一定の順番に従って考えているのです。それを表したのがこの公式です。

 当然のことながら、この公式によって、ぼくは長いファンドマネージャー生活を勝ち抜いてきました。というわけで、その効果は実証済みです。2007 年からの機械的なシミュレーション(第1章)を見ても、公式を代入するだけで、日経平均を大きく上回る成果が出ています。

 公式を覚えることは最も簡単で、即効性の高い方法です。本書を読むことで、読者の皆さんにプロの実力を身につけていただくことがぼくの願いです。

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