発達障害のひとつであるADHD(注意欠陥・多動症)の当事者である借金玉さん。早稲田大学卒業後、大手金融機関に勤務するものの仕事がまったくできずに退職。その後、“一発逆転”を狙って起業するも失敗して多額の借金を抱え、1ヵ月家から出られない「うつの底」に沈んだ経験をもっています。
近著『発達障害サバイバルガイド──「あたりまえ」がやれない僕らがどうにか生きていくコツ47』では、借金玉さんが幾多の失敗から手に入れた「食っていくための生活術」が紹介されています。
働かなくても生活することはできますが、生活せずに働くことはできません。仕事第一の人にとって見逃されがちですが、生活術は、仕事をするうえでのとても重要な「土台」なのです。
この連載では、本書から「在宅ワーク」「休息法」「お金の使い方」「食事」「うつとの向き合い方」まで「ラクになった!」「自分の悩みが解像度高く言語化された!」と話題のライフハックと、その背景にある思想に迫ります(イラスト:伊藤ハムスター。こちらは2020年10月27日の記事の再掲載です)。

発達障害の僕が発見した「いつも少し遅刻する人」に根本的に欠けている考え方

いつも何かを探していた人生でした

 僕はこれまでの人生、いつも何かを探していたような気がします。なんかちょっと詩的なフレーズですが、すいません、実際のところは「出かけようと思ったらカギがない」「財布が見つからない」というしょうもない話です。

 僕はベルトが見つけられなくて遅刻したことが、これまで数えきれないほどあります。不動産の大切な契約書をいただく日に気合いを入れて早起きしたのに、まさか「ベルトが見つからないので遅刻します」とは恐ろしくていえませんでした。

 家のカギ、バイクのカギ、スマホ、財布、ベルト……こういう「365日、毎日使うモノ」を失くしては大騒ぎしていると、人生は前に進みません。一見くだらないことに思えますが、毎日のことなので、その積み重なった時間的な損失と精神的ダメージは、人生をじわじわ侵食してきます。

 いくら予備を多く持っていたとしても、突然発生する「あれっ、ない?」を完全に回避することはできません。だから、カギが見つからないときは、「おいカギ! どこだ!」と叫んだら「ここです」と返事をしてくれる─これが理想です。最近、この望みが、「キーファインダー」という道具で実現することが判明したのです。

20年の苦しみが約5000円で解決!

 このキーファインダー、財布や定期入れといったものにタグをつけておくと、リモコンのボタンを押せば対応するタグからアラーム音が鳴るシンプルな仕組みなのですが、探しものにこれ以上便利なものはないと断言できます。2500円ほどでタグが6個ついてきますので、2つも買えば日常の中で起きる「あれっ、ない?」の時間を限りなくゼロにできます。

 僕が小学生時代から、20年以上苦しんできたことが、たった5000円の出費で解決できる。この事実にちょっと落ち込んでしまいそうですが、問題の解決とは得てしてそういうものです。固い誓いも揺るがぬ決意も、5000円で買った道具にかなわないのです。僕はベルトにさえこれを装着しています。

 ちなみにこの神ツールには「リモコンを紛失する」という落とし穴があります。僕も1個紛失してすべてをパーにしましたが、現在はデスクの横に強力な両面テープで貼り付けてあります。発達障害のみなさん、「固定できるものは全部固定する」は大事なライフハックです。キーファインダーを購入するときには強力な両面テープを同時に買うようにしましょう。