習主席支配の中国、過激な国家主義への暗転Photo:Yves Dean/gettyimages

 中国に吹き荒れる国家主義の風がここにきて、過激な様相を帯びてきた。毛沢東主義の暗い過去を想起させる足元の潮流を後押ししているのが、共産党のプロパガンダや習近平国家主席の政治的野望、そして新型コロナウイルスの封じ込めに成功した国家のプライドだ。

 ネット上で、中国指導部を批判する、または国家への忠誠が欠如していると見なされた人物は、執拗(しつよう)な集団攻撃の標的になる。嫌がらせは標的が沈黙するまで続く。中には職を失った人もいる。

 今年目立った標的となったのが、コロナ対応を巡り、当局者の初動に疑問を投げかけた人々だ。湖北省武漢市の文筆家である方方氏もターゲットになった1人だ。

 方方氏がネット上で住民の苦境に言及し、地元政府の対応の遅れを批判すると、多くの国内ネットユーザーは同氏を「裏切り者」と切り捨てた。武漢市内のバス停には、同氏に対して「人々に犯した罪を償うため、頭をそるか死ね」と書かれた匿名のポスターが貼られ、その画像はネット上に拡散した。太極拳の有名な武術家は「正義の握り拳」で同氏を攻撃するよう唱えた。