連載第4回は、タクシー業界で働く乗務員(タクシードライバー)を取り上げる。彼は50代で月収手取り20万円台。1日に20時間ほど車を運転するため、下半身を痛め、和式トイレを使えない日々だ。後半では、タクシーの運転手が加盟する労働組合を取材した。この業界の厳しい実態が見えてくる。

 あなたは、生き残ることができるか。


今回のシュリンク業界――タクシー

JR新宿駅の西口で付け待ちをするタクシー。(※本文と関係はありません)

 2009年度のタクシー市場は、1兆7749億円(法人、個人合計)。バブル崩壊前後となる1991年度の6割強にまで落ち込んだ(日経新聞 2010年10月27日朝刊)。

 業界で大シュリンクが起きているベースには、自家用車や電車などの交通手段の充実、長引く不況による利用者の減少などが挙げられる。

 また、2002年から最近まで続いた規制緩和により、タクシー台数が一気に増えた結果、業者間、ドライバー間で競争が激化したことも、ドライバーの生活苦に拍車をかけている。まさに「規制緩和不況」の典型的な業界と言える。

 今後は、医療、福祉、観光分野などで潜在的な需要を掘り起こすことが、業界にとっての課題となる。


老後不安でタクシーを始めたものの
50代で年収380万円前後の生活苦

「ここ数年は平均年収が380万円前後(額面)で、月収の手取りは20万円台の後半かな……。歩合給だから、額は稼ぎに応じて毎月変わる」

 タクシードライバーの坂田義則さん(仮名・54歳)は、太い声でつぶやく。6年前(2006年)に都内のタクシー会社に入り、現在は2つ目の会社に勤務する。