ハンター・バイデンPhoto:Handout/gettyimages

――筆者のジェラルド・ベーカーはWSJ前編集局長で、現在はエディター・アット・ラージ

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 あらゆることが考慮されるわけではないらしい(訳注:米ナショナル・パブリック・ラジオ=NPRには「あらゆることを考慮して〔All Things Considered〕」という名称のニュース番組がある)。不名誉なことに、ジャーナリズムはこれまでもあれこれと偽善的な言葉を発してきたが、NPRが先週出した声明に並ぶものはほとんど見当たらない。

 NPRのニュース担当マネージングディレクター、テレンス・サミュエルズ氏は、ハンター・バイデン氏に関するニュースを報じなかった理由についてこう説明した。「われわれはニュースとは言えないニュースに自分たちの時間を無駄にしたくない。ただの混乱のもとにすぎないニュースにリスナーや読者の時間を無駄にしたくない」

 不誠実な行為としてNPRの行い以上に厚かましいものはないかもしれないが、NPRだけの話ではない。全米の報道機関の真実の門番たちはハンター・バイデン氏の金銭的な野望――そして野望を追求するために父親であるジョー・バイデン氏の名前を利用したこと――に関するニューヨークポスト紙の記事を無視したことについて、さまざまな言い訳をひねり出している。

 ハンター氏の記事は重要ではない、記事の内容が本当かどうか確認されていない(例えば、トランプ氏とロシア大統領府が2016年の米大統領選を乗っ取ったという主張とは違う)というのが彼らの言い分だ。あらゆる不都合な真実に使われる「ロシアの陰謀」という、いつもの反応もあった。

 しかしこの記事は重要だった。記事は息子の取引へのバイデン氏の関与をはっきりと証明するものではなかったが、関与を示唆する重要な詳細、息子が外国の企業に対してどのように家族のコネを利用したかを示す詳細を含んでいた。それに、ハンター氏の記事にうろたえている報道機関がトランプ大統領について数えきれないほどの疑惑を喜んで報じていたこと、そしてその多くがはるかに説得力に欠ける証拠に基づいていたことを忘れてはいけない。