SNSのフィルターバブルに閉じこもったほうが幸せだ…情報科学者がそう考えるワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

スマホを開くたびについ見てしまう「X」。多様性の時代と言われる現代で、人は他人と比較されることに疲弊している。そうした状況下で、自分の居場所の1つとして見出されているのがXだ。しかしなぜか息苦しさや不安も感じてはいないだろうか。その理由を情報科学者の著者が、Xが持つ承認と比較の構造から明らかにしていく。※本稿は、岡嶋裕史『子どものSNS禁止より、大人のX規制が必要な理由』(光文社)の一部を抜粋・編集したものです。

自己実現や承認欲求を
満たしてくれるSNS

 多種多様な性向を持つ個人が、リアルな空間で一人一人の「快」を手に入れることは容易ではありません。また、共同体でまとまることが是(当然、個人の趣味嗜好やわがままは抑制されることになります)とされる社会では、そもそも「快」を手に入れようとアクションを起こすことは憚られます。

 しかし、社会の構造が変わり、サイバー空間での活動時間が増えると、サイバー空間において「快」の状態を作り、維持することができるようになりました。

 ここでマズローの仮説(編集部注/心理学理論「マズローの欲求階層説」。米国の心理学者であるアブラハム・マズローが提唱した。人の欲求を生理的欲求、安全の欲求、社会的欲求、承認欲求、自己実現の欲求の5つに分類し、ピラミッド構造で表した)を持ち出すのは気が引けますが、人にとって自己実現の欲求、承認の欲求は極めて根源的なものです。もうちょっと噛み砕いて記すなら、自分の行いで社会に爪痕を残したいし、他人に褒められたい、となります。身も蓋もないですが、確かに「快」を感じられます。

 そこでSNSです。

 小学校のクラスを思い出していただけるとよいですが、クラス全員から褒められることは無理です。いろんな人がいますから。半分に支持されることも怪しいものだと思います。この不安な状態を回避するために、みんな友だちグループを作ることに勤しみます。少なくとも友だちグループの中ではみんなに認められ、「快」の状態で過ごしたいからです。