「あぁ、小青竜湯ですか。うーん、ということは、この1カ月余り、芍薬甘草湯を毎晩服用し、4日前ぐらいからは小青竜湯も飲み始めたということですか」

「そうです。……いけなかったんでしょうか」

「そうですねぇ。芍薬甘草湯は、こむら返りによく効くので処方されることも多い漢方薬なんですが副作用もあるんですよ。偽(ぎ)アルドステロン症というんですけどね」

「偽アルドステロン症ですか」

「はい。芍薬甘草湯は名前の通り、芍薬と甘草の生薬から成り立っています。甘草の主成分はグリチルリチンといって、処方全体の作用を調和させたり、他の生薬の毒性を緩和させる目的であったり、鎮咳、去痰、鎮痙、止痛、健胃、清熱解毒などの効果を目的にしたりと、非常に使い勝手のいい成分で、漢方処方の約7割には甘草が配合されています。漢方薬以外では胃腸薬や風邪薬にも入っていることが多いです。

 偽アルドステロン症は、この甘草の摂り過ぎによってアルドステロンという副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンを過剰摂取した時と同じような症状が出ることをいいます。芍薬甘草湯には甘草が他の漢方薬より多く含まれており、副作用のところにも偽アルドステロン症のことが書いてあります。

 具体的には血清カリウムの低下と、血清ナトリウムの上昇が出現するんですけどね。

 症状としては、『手足のだるさ』『しびれ』『つっぱり感』『こわばり』がみられ、これらに加えて、『力が抜ける感じ』『こむら返り』『筋肉痛』が現れて、だんだんきつくなっていきます」

「えぇっ、そうなんですか。じゃあ芍薬甘草湯が悪かったんですか」

「悪いというか、飲み過ぎですね。漢方は即効性がないと思われがちですが、芍薬甘草湯は即効性があるので、服用される場合は、症状が出た際に飲むだけでいいんです。予防的に飲むというのはよくないです。

 それに、甘草の主成分であるグリチルリチンは小青竜湯にも入っているんですよ。もともと芍薬甘草湯を飲み過ぎて、グリチルリチンを摂り過ぎていたところに小青竜湯のグリチルリチンも加わって、一気に症状が出てしまったんでしょう。

 まあ偽アルドステロン症になっているかどうかは、血液検査をすればわかるんですが、まずは芍薬甘草湯と小青竜湯を止めて、様子を見てください」