それでも本来、体にとっては異物そのものだ。むしろ、排除のために体が何らかの免疫反応を起こすのを利用するのが、ワクチンなのだ。そのための無過失補償であり、「実際の使用条件で」「まれな有害事象を検討」するための製造販売後の調査・試験が重要とされる。

 特に、今回のように国レベルで一気に何千万件も接種を実施すれば、膨大な数の有害事象が発生し、重篤な症例もまとまった件数になる可能性がある。副反応と認定されれば、国の補償総額も膨大になるだろう。そうした事態においても、適切に副反応認定が下りるのか……。

 というのも、日本の健康被害救済制度の弱点は、その認定基準があいまいなところだ。

 意外かもしれないが、ワクチン副反応認定はかなり「甘く」行われてきた。被害者救済の観点から、医学的にはワクチンの影響とは考えにくい(例えば接種から数年後に症状が出現したような)場合も、副反応として認定されている。2013~18年の数字で見ると、年間の審査件数は74~108件で認定件数は55~78件、認定割合としては75~85%だ。

 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会)も、定期接種A類ワクチンによる副反応の認定の際、「厳密な医学的な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象とする」と、緩やかに判断する立場を明らかにしている。

 そのかわり、副反応の認定基準は明確に定められていない。厚労省のサイト内では、検討部会の議事録や配布資料は公開されているが、認定されなかった症例の詳細データは含まれない。実際にどんな症状のケースを補償対象とし、具体的にどんな場合は副反応と認めないのか、線引きを確かめる術はない。

 これは、従来の認定水準が今後も維持される保証がない、ということでもある。万が一認定が下りなかった場合に「補償対象をかなり絞り込んでいるのでは?」との疑問や不服を招きやすく、訴訟を惹起しかねない。国に対しては国家賠償法、製薬企業に対しては民法、製造物責任法に基づく損害賠償請求が可能だ。

被害者の救済と
製薬企業の保護を両立するには?

 さらに現行制度では、副反応として補償を得られたとしても、重ねて訴訟を起こすことも認められている。ともすれば二重取りが可能で、被害者に有利な制度にも見える。しかし実際のところ、裁判を継続し勝訴判決を得るには、莫大な時間と費用、そして技術を要する。国や製薬企業の過失を認めさせるための立証責任は、素人である原告側にあり、圧倒的に不利だ。