新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチンの開発が急がれている。ワクチンの開発には通常3〜5年はかかるのが常識だが、SARS-CoV-2の場合はSARS(重症急性呼吸器症候群)やMERS(中東呼吸器症候群)がアウトブレイク(一部地域や施設で発生した予想外の集団感染)した際のワクチン候補が使えそうだということもあり、1〜2年以内の実用化を目指している。「遅い!」との声があるだろうが、これがかなえば人類史上最速の記録だ。4月10日現在で、公開されている情報をまとめた。(医学ライター 井手ゆきえ)
ワクチンの原理は免疫の事前学習
バイオテックで開発が迅速に
ワクチンの基本的な原理は、免疫系に特定の病原体(ウイルスや細菌)の様相を事前に学習、記憶させておくことで、いざ本物の病原体が押し寄せて来た際に迅速に免疫応答が生じ、感染や重症化を防ぐというもの。現在、使用されているワクチンは、細心の注意を払って本物の病原体を培養、増殖したのち弱毒化、不活化(薬品などで増殖能を排除すること)して利用されている。しかし、バイオテクノロジーが発展した現在、もっと簡単で迅速なワクチン開発が可能になった。