この連載では、現在筆者が通う慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科において、親しく教えをいただいている先生のお一人、元マイクロソフト日本法人の会長で現在は同研究科教授の古川享さんをホストに迎えて、古川さんが日本を変えていく存在と期待を寄せるスマート・ウーマンの方たちとの対談を掲載していきたいと思っています。今回はその第一弾。古川さんは、スタートアップベンチャーなど、元気で野心に満ちた多くの若者たちとの交流を積極的に行っています。そのなかで、ひときわ輝きたのもしく見えた女性、現在はネットの情報共有サービス「Evernote」にいらっしゃる上野美香さんの登場です。

TEDxTokyoに自ら手を挙げてボランティアとして参加

「ネットの底なしの可能性に魅せられて」(Evernote・上野美香)――元MS日本法人会長古川享が聞き出す 今を駆けるスマート・ウーマンの本音うえの・みか/Director of Marketing & Communications, Evernote Japan
コーポレートコミュニケーションコンサルタント。ネット・IT系ベンチャーでのマーケティング、広報活動、IRに関する業務支援等を行うフリーランサーとして活躍。インターネットコミュニティに造詣が深く、ソーシャルメディア上でも積極的な情報発信を行っている。
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Photo by Sam Furukawa

古川享(以下古川):美香さんはツイッターでマーケティングをしていたことがあったり、現在はEvernoteに勤めていますね。簡単にご自身の経歴を教えてくれますか。

上野美香(以下上野):大学を卒業後はSE(システムエンジニア)として企業のシステム構築を担当しました。その後ITベンチャーの投資をしているネオテニーに入社して、そこでいろいろな起業家に出会ったり、ベンチャーコミュニティに入るきっかけをもらいました。その後日本ベリサインに移り、株式上場のお手伝いとIRを担当しました。IRは初めての経験でしたが、ネオテニーでベンチャー投資を経験していたので、違和感なくチャレンジすることができました。

 その後個人事業主として仕事を始めました。IRを含めたコーポレート・コミュニケーションを専門として、IT関連ベンチャーのIR体制や運用設計、PRと連携して対外的な情報発信の支援を行います。その後、日本語版が始まったばかりのツイッターで日本のマーケティングを担当しました。ネオテニーが出資していたシックス・アパートでブログメディアの編集長を担当させてもらったこともあります。2011年の初めからEvernoteでフルタイムで仕事をしています。

「ネットの底なしの可能性に魅せられて」(Evernote・上野美香)――元MS日本法人会長古川享が聞き出す 今を駆けるスマート・ウーマンの本音ふるかわ・すすむ/ 元マイクロソフト日本法人会長・米マイクロソフト本社副社長。2006年から慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授を務める。

古川:ただ美香さんの場合、特定の会社のマーケティングだけではなく、上野さん個人の活動(@mikamika59)も積極的に行っていますね。毎回TEDxTokyoで海外から来る人のインタビューを担当したりしていますね。「いつも、そんなところになぜいるの?」というところにいたりする。会社としての立場だけに留まらず、自分が社会に貢献する、普段だったら接点のない会社の人といっしょに何かアクティビティをする。そう思ってもなかなか体が動かない人もいるよね。美香さんは、どうして自ら行動を起こすことができるのだろう。
※TEDx (テデックス)は、米国で開催される招待制のカンファレンス、TEDの精神「ideas worth spreading」 のもとに世界各地で発足しているコミュニティ。TEDx のxはTEDのコンセプトを受け継いだ団体であることを示す。現在60ヵ国以上にわたる都市でTEDxイベントが実施されている。TEDxTokyoは東京をベースに活動することを目的に、パトリック・ニューウェルとトッド・ポーターの二人によって創立された(http://tedxtokyo.com/より)。

上野:TEDxTokyoは2010年に開催された2回目から参加しています。運営事務局に知人がいて、「参加したいのだけど」と聞いてみたのが関わるきっかけでした。参加者は招待制で限られているし、たぶん無理かと思ったのですが、「じゃ、ボランティアやってみない?」と返事があって、「やるやる!」という感じでした。

 最初はウェブサイトの翻訳の手伝いで、オンラインメインの作業だったのですが、開催日の当日の舞台裏のインタビューができますか、とメディアチームから聞かれて、「やります」と言ったら、日本人スピーカーへのインタビューを私が担当することになりました。Ustreamで生中継した舞台裏インタビューでは、TEDxTokyoのコンセプトはもとより、TEDxTokyoを支えている人たち、参加している人たちの声を届けたいと思いました。舞台だけでなく、会場内で作られているアートや展示されているものもあるので、制作者の方にインタビューし、作っている場面も中継しました。

 100人以上のボランティアで運営しているTEDxTokyoですが、誰でも参加できる機会があって、小さくてもそれぞれ自分のできることをやっている。スピーカーも運営スタッフも、ポジティブなパワーが集まって素晴らしい人やアイデア、パフォーマンスを広める場を作っていること、それが一番の魅力かもしれません。