「ノーベル賞有力候補は?」
ミスコン候補者の珍解答

 宮部さんといえば、名作『火車』について呟かれた言葉も忘れられません。オール読物新人賞をとった後、メキメキと頭角を表した宮部さんが、代表作ともいえる『火車』を発表したのは93年のこと。しかし、『火車』は直木賞をとれませんでした。同じときに候補になったのが高村薫さんの『マークスの山』でした。そして高村さんが受賞して、『火車』は受賞しなかったのです。

 そのころから、少し宮部さんの作風が変わったように思います。若いときにお付き合いがあったとはいえ、文藝畑ではない私はその後、突っ込んだお話はしたことはありません。

 ただ、編集長として週刊文春への小説連載をお願いしていたとき、「もう一度『火車』のような作品を書け、といわれても書けません。気力も体力も使い果たすくらいの作品だったのです」とおっしゃっていたことを思い出します。

 宮部さんは、それから6年後に『理由』で直木賞を受賞され、ミステリーから時代小説、子ども向け小説など多様なジャンルを手がけるようになり、しかも必ずベストセラーになります。

「自分の健康を考え、書きたいものだけを書くようにする」

 そのときおっしゃっていた言葉が、読者の手にとりやすい作風を生んだのだと思います。 実際、私が女子大で授業をして作家の名前を出すときに、すぐにわかってもらえる数少ない作家です。

「女子大のミスコンをやるから」と、学園祭のスタッフから候補者に出すクイズを考えてくれと頼まれたことがあります。なるべく簡単にと思って、「この3人の中から、ノーベル文学賞をとった作家は誰でしょう」という問題を出しました。