コロナ禍で、映画の劇場公開の延期や中止が相次いだ今年はオンラインでの公開に踏み切った作品が目立った。製作費2億ドルともいわれるディズニー実写映画の『ムーラン』もそのひとつ。ディズニーが本腰を入れる公式動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で独占配信されると、世界の6割以上の国で話題を集中させた。果たして、この結果は新しいビジネスモデルを検討する動きに変えていくのか。本国では組織再編の動きが見られるなか、エンタメ界の王者がシフトチェンジを図ろうとするその狙いを推察した。(テレビ業界ジャーナリスト 長谷川朋子)
政治論争にもなった『ムーラン』は
世界のトレンドチャートのトップ
『ムーラン』は1998年に世界興収3億ドルを超えるヒットアニメ映画の実写リメーク版として、今年9月4日にディズニー公式動画配信サービス『Disney+(ディズニープラス)』で独占配信された作品である。
それが「Top Trending Movies Worldwide」(2020年10月)によると、世界で最も話題になった映画作品であることがわかった。
VPN(仮想プライベートネットワーク)プロバイダーの米アトラスVPNが、IMDb(インターネット・ムービー・データベース)とGoogle Trendsのデータを照らし合わせ、世界的にどの映画がトレンドになっているのかを調査分析した結果により、映画『ムーラン』がヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニア、アフリカの87カ国のうち53カ国でトレンドチャートのトップに立った。つまり、世界の61%の国で『ムーラン』が最も話題をさらった映画作品になったというわけだ(参照:アトラスVPNのリリース )。
トレンドトップに至った要因は製作費2億ドル(日本円で210億円)が投じられた超大作の作品論以上に、政治論争に発展させてしまった理由で注目を集めたことが大きい。