新型コロナウイルス予防ワクチンの開発レースで先頭を走る2つの有力候補が初期データで高い有効性を示したことで、現在のパンデミック(世界的な大流行)をはるかに超えて、医療の世界に大きな影響を与える可能性が出てきた。がんや心臓病、他の感染症など一連の疾患に対して、遺伝子に基づく技術が新たな治療法を提供する――そうした新時代の到来を告げているとも言えそうだ。研究者はかねて「メッセンジャーRNA(mRNA)」と呼ばれる新技術の実用化に向けて取り組んできたが、実現には至っていなかった。mRNAワクチンが規制当局に承認された例はまだない。だが、米ファイザーと独ビオンテック、および米モデルナが開発を進めるコロナワクチン候補はこのmRNAを基礎としており、初期データからはいずれもコロナ予防で9割以上の効果が確認された。これは旧型の一部ワクチンに匹敵する効果だが、mRNAワクチンの開発期間は従来よりもはるかに短い。