トライアルテクノロジー 代表取締役社長 石橋亮太さん Photo by Mayumi Sakai
「買う予定はなかったのに、気づけばカゴに入れていた」――誰もが1度は経験したことがあるだろうスーパーでの衝動買い。実は店頭での購買の約8割が、買う予定のなかった非計画購買だと言われている。この8割を解き明かし、売り上げに結びつけようとしているのが、九州発のディスカウント型スーパー「トライアル」だ。2025年には西友を買収し、26年6月期の連結売上高は1兆3225億円と予想されている。快進撃を支える柱の一つが、売り場の緻密なマーケティング戦略だ。一体何をしているのか?(ノンフィクションライター 酒井真弓)
売り上げがケタ違いに伸びる仕掛けとは?
お客の「買う予定はなかったのに、気づけばカゴに入れていた」を実現するため、小売店は一体何をしているのか?
トライアルの場合、そのカギは、売り場の音声付きデジタルサイネージ「インストアサイネージ」にある。2023年にトライアルの福岡県内全店舗で導入が完了し、2026年3月からは西友の首都圏74店舗でも順次設置が始まっている。
インストアサイネージの最大の強みは、来店客が「買い物モード」に入ったタイミングで、商品の魅力を視覚・聴覚にアピールできることだ。テレビCMの役割がブランディングや認知拡大なら、インストアサイネージは商品をカゴに入れる最後のひと押し。購買までのラストワンマイルをゼロに近づけるこの仕組みは、メーカー向けの広告枠として小売りの新たな収益源にもなる。
都内の西友に設置されたインストアサイネージ Photo by M.S.
焼き芋、入浴剤、マスクの売り上げが激増
インストアサイネージで驚異的な売り上げを記録した一例が、焼き芋、そしてあるメーカーの入浴剤だ。トライアルテクノロジー代表取締役社長の石橋亮太さんが、購買意欲をかきたてる仕組みを明かしてくれた。
まず焼き芋は、インストアサイネージを配信していない店舗に比べ、売り上げが114%アップした。「インストアサイネージを焼き芋コーナーのエリアに設置し、お客さまの視線をジャックするんです。品川駅のコンコースのデジタルサイネージが全面ジャックされたところをイメージしていただけると分かりやすいかもしれません。加えて『焼き芋、焼き立て』と呼びかけると、お客さまは思わず目を向けてしまうんです」







