今、最も注目を集める急成長企業ワークマンは、「しない会社」だ。
◎社員のストレスになることはしない
◎ワークマンらしくないことはしない
◎価値を生まない無駄なことはしない
とりわけ「頑張ること」はしないどころか、禁止! それでも業績は、10期連続最高益を更新中だ。
なぜ、コロナ禍でも業績が伸び続けているのか。
なぜ、自分の頭で考える社員が急増しているのか。
なぜ、いま「しない経営」が最強なのか。
このたびワークマン急成長の仕掛け人である土屋哲雄専務が、Amazonに負けない戦略を初めて語った初の著書『ワークマン式「しない経営」』が発売たちまち3刷となった。
12/7の日経新聞にも、競争戦略の第一人者で一橋大学ビジネススクールの楠木建教授が「ワークマンの戦略は“世紀の傑作”。これほど、しびれる戦略はない」とコメントを寄せた。
今回、ワークマンの土屋哲雄専務と早稲田大学大学院・ビジネススクールの入山章栄教授が初めて本書で対談。両者は何を語ったのだろうか。

驚異の脱力系企業ワークマンのサーバントリーダー……ワークマンの仕掛け人と早大入山教授の白熱対談11Photo: Adobe Stock

驚異の脱力系企業の
未来型サーバントリーダー

驚異の脱力系企業ワークマンのサーバントリーダー……ワークマンの仕掛け人と早大入山教授の白熱対談11入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
慶應義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でおもに自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。2013年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。2019年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書にベストセラーとなっている『世界標準の経営理論』などがある。
驚異の脱力系企業ワークマンのサーバントリーダー……ワークマンの仕掛け人と早大入山教授の白熱対談11土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を『ワークマン式「しない経営」』で初めて公開。本書が初の著書。「だから、この本。」でも5回のインタビューが掲載された。

入山章栄(以下、入山)  土屋さんは会社のビジョンを社員の前で熱く語ることはないのですか。

土屋哲雄(以下、土屋)  個別には社員とよく話をしますが、社員全員の前で話すことはほとんどありません。全員の前で話したのは、会社に入って6回くらいでしょうか。反対に社員から、「こんなに会社が変わっているのだから説明したほうがいいですよ」と言われ、昨年は2年ぶりぐらいに話しました。

入山  会社のビジョンをトップが語り、それを中間管理職を通じて現場に落としていく。そうやって会社の方向性を共有するのがよい経営といわれていますが、ワークマンの場合、そうではないようですね。

土屋  はい。ミッション、ビジョン、バリューも毎年変わっています。

入山  毎年変わっているんですか(笑)。メチャメチャ面白いです。驚異の脱力系企業ですね。

土屋  そうですね。基本的にはオペレーション優位の会社ですから、上が「やれ」と言うとやりすぎてしまうのです。昔は社長の命令は「死んでも成しとげる」雰囲気がありました。それは企業にとってよくない。

入山 土屋さんは未来的なリーダーです。リーダーシップのスタイルでいくと、サーバントリーダーでしょう。

土屋 自分でもそう思いますね。商社時代はジャングル・ファイターでしたが、ワークマンにきて相当変わったと思います。

入山 しくみをつくり、社員一人ひとりの力を発揮させるのは典型的なサーバントリーダー。従来の強い権力を握るリーダーの弊害は、情報化社会において顕著に表れてきました。

というのも、情報化社会では扱う知識量が膨大になるため、一人のリーダーの力だけでは処理することができない。その結果、時代の流れについていけなくなる恐れがあります。その点、草の根のエクセル革命は衆知を集める全員参加型経営ですね。

土屋 そうですね。

入山  サーバントリーダーは未来的です。サーバントリーダーだからこそ、ブルーオーシャン市場を拡張し、ワークマンプラスという成果が得られたのだと思います。

社員の賛同を得ながら結果を出せたのは、サーバント・リーダーシップで「しない経営」と「エクセル経営」を浸透させたことが大きいと思います。

【土屋より】
ps.「だから、この本。」に私の全5回インタビュー連載がありますが、特に下記の記事が好評だったのであわせてお読みいただけたら嬉しいです。

「だから、この本。」【第1回】“人生一発逆転の新・知的生産術” ワークマン式 朝2時30分起きの仕事術

驚異の脱力系企業ワークマンのサーバントリーダー……ワークマンの仕掛け人と早大入山教授の白熱対談11
入山章栄(いりやま・あきえ)
早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)教授
慶応義塾大学経済学部卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所で主に自動車メーカー・国内外政府機関への調査・コンサルティング業務に従事した後、2008年に米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールアシスタントプロフェッサー。2013年より早稲田大学大学院経営管理研究科(ビジネススクール)准教授。2019年から現職。Strategic Management Journal, Journal of International Business Studiesなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。著書に『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)、『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)がある。
Photo by Aiko Suzuki
土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を本書で初めて公開。本書が初の著書。