“人生一発逆転の新・知的生産術”<br />ワークマン式<br />朝2時30分起きの仕事術

閉店や撤退が相次ぐ厳冬の衣服業界でも絶好調なのが、作業服専門店の「ワークマン」。
「高機能・低価格」という4000億円の空白市場を開拓し、なんと10期連続最高益。ついに国内店舗数ではユニクロを抜いた。
異例ともいえる急成長を遂げているため、さぞやガンバリズム満載でとことん働く会社なのかと思いきや、急成長のカギは3つの「しない」だという。
1.社員のストレスになることはしない
2.ワークマンらしくないことはしない
3.価値を生まない無駄なことはしない
これは一体どういうことか?
1.について、残業しない、仕事の期限を設けない、ノルマと短期目標を設定しない。
2.について、他社と競争しない、値引をしない、デザインを変えない。
3.について、社内行事をしない。会議を極力しない。経営幹部は極力出社しない。
とりわけ「頑張る」ことはしないどころか禁止だという。
このたび急成長の仕掛け人・ワークマンの土屋哲雄専務の経営理論とノウハウがすべて詰め込まれた白熱の書というべき『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』がついに発売となり、大きな話題となっている。
社内一経営書に携わってきた編集長が「この10年でNo.1の経営書」と断言する本は一体どういうものか。
土屋氏自身も、ワークマンの経営に携わる前は、ノルマや期限に追われる日々をすごしていたが、「しない経営」に舵を切った途端、自身のライフスタイルや習慣も一変。人生が好転していったという。
今回は、稀代のマーケターで名経営者である土屋氏の、無駄を削ぎ落とし、効率化が徹底された知的生産術と仕事術について聞いた(聞き手&構成・川代紗生/撮影・疋田千里/編集・寺田庸二)。

「私の考えは、50%、間違っている」
と10人の意見を聞く

──まずは、土屋さんがワークマンの専務としてどんな仕事をされているのか教えてください。

土屋哲雄(以下、土屋):私は還暦直前の2012年に、CIO(Chief Information Officer:企業の情報戦略における最高責任者)としてワークマンに入社しました。現在は役割が広がって企業戦略、ブランディング、情報発信とインフラ整備など、会社の将来を見るのが仕事です。

“人生一発逆転の新・知的生産術”<br />ワークマン式<br />朝2時30分起きの仕事術土屋哲雄(つちや・てつお)
株式会社ワークマン専務取締役
1952年生まれ。東京大学経済学部卒。三井物産入社後、海外留学を経て、三井物産デジタル社長に就任。企業内ベンチャーとして電子機器製品を開発し大ヒット。本社経営企画室次長、エレクトロニクス製品開発部長、上海広電三井物貿有限公司総経理、三井情報取締役など30年以上の商社勤務を経て2012年、ワークマンに入社。プロ顧客をターゲットとする作業服専門店に「エクセル経営」を持ち込んで社内改革。一般客向けに企画したアウトドアウェア新業態店「ワークマンプラス(WORKMAN Plus)」が大ヒットし、「マーケター・オブ・ザ・イヤー2019」大賞、会社として「2019年度ポーター賞」を受賞。2012年、ワークマン常務取締役。2019年6月、専務取締役経営企画部・開発本部・情報システム部・ロジスティクス部担当(現任)に就任。「ダイヤモンド経営塾」第八期講師。これまで明かされてこなかった「しない経営」と「エクセル経営」の両輪によりブルーオーシャン市場を頑張らずに切り拓く秘密を『ワークマン式「しない経営」』で初めて公開。本書が初の著書。ダイヤモンド書籍オンラインでも大好評連載継続中。

仕事の5割は現場視察、店舗、出店候補地回り。店舗に行って生まれたアイデアや気づきを、データ検証を慎重に進めながら戦略化していきます。

仕事の3割は仕事のコンセプト、討議資料(年数回)と対外向け文書づくり。広報リリース、HP、加盟店求人広告、チラシのキャッチコピー、新卒募集広告、IR文書の一部作成なども行います。

残りの2割は、社員有識者の意見を聴くこと。私は仕事のアイデアが浮かぶと、まず社内でアドバルーンを上げるようにしています。方向性を示し、それをみんなで議論して修正していく。

私はいつも「私の考えは、50%、間違っている」と社員に伝えるようにしているんです。

還暦直前の中途入社ですし、この業界のこともよく知りません。だから、道を誤らないために、必ず10人くらいの意見を聞く。意見のヒアリングに多くの時間を投資しています。

これも「しない経営」の一つですが、私から社員に業務命令を出したのは8年間で2回だけ。全社員の前で話したのは8年間で6回だけです。

「しない経営」がモットーなので、仕事をおもいっきり取捨選択しています。

たとえば、メーカーの選定や価格交渉は、情報システム部長に任せ、情報システムを「つくる側」の仕事には一切関わりません。

私の仕事は、何を導入するかの意思決定と、情報システムを使って価値を生むことに集中することです。