先月中旬から下旬、中国は「多国間外交」のオンパレードのなかにあった。
ASEAN(東南アジア諸国連合)・中国首脳会議、ASEAN・日中韓首脳会議、東アジア首脳会議、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)首脳会議、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国)首脳会議、APEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議、G20首脳会議……。
会議の性質に沿って、習近平国家主席と李克強首相(以下敬称略)が分担し、中華人民共和国を代表して出席し、演説を発表するのだが、一連の演説内容を傍観、整理する限り、中国共産党が目下、国際社会に対して最も訴えたいことは以下の3点であるようだ。
・中国は新型コロナウイルスの抑制に尽力し、成果を収めた。引き続き、ワクチン開発を含め、各国と協力し、人類全体の敵に打ち勝つために努力を惜しまない。
・世界は世紀の大変局の渦中にあり、一国中心主義や貿易保護主義が台頭するなか、中国は引き続き経済グローバリゼーション、多国間主義、自由貿易を推進する。
・中国経済はコロナの打撃を受けつつも回復的成長を遂げている。中国は引き続き改革開放を推し進め、世界経済の成長にとってのエンジンになる。
2021年は、中国共産党にとって極めて重要な「政治の季節」である。「二つの百年目標」の一つである中国共産党結党百周年(もう一つは中華人民共和国建国百周年に相当する2049年)を迎える。翌年には、共産党第20回大会(2022年秋に予定)も控える。コロナの持続的抑制、経済のV字回復、そしてワクチン、先般8年越しの交渉を経て署名したRCEPなどを駆使しつつ、独自の経済外交を展開することで、中国共産党の正統性維持・強化という最重要課題を達成しようとするであろう。