ジョー・バイデンPhoto:The Washington Post/gettyimages

――筆者のジェラルド・F・サイブはWSJエグゼクティブ・ワシントン・エディター

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 米政界の経験則によると、大統領は議会や内政の制約に縛られても、国際舞台ではなお自由に行動する余地を見つけることができる。

 こうした法則は往々にして、大統領の国内への影響力が薄れる任期終盤に当てはまる。だがジョー・バイデン次期大統領の場合、就任早々に当てはまるかもしれない。ジョージア州での上院選決選投票で争われる2議席の行方によって、バイデン氏は与野党が僅差で分断された議会に直面する可能性がある。

 一方、外交政策に関しては、単独で行動を起こす余地が大きくなりそうだ。特にドナルド・トランプ大統領が独断で発した一連の大統領令を巡り、バイデン氏は撤回するかどうか早期に判断を迫られる。イランやアフガニスタン問題、そして気候変動などの課題がそれに含まれる。喫緊の課題について以下に考察してみよう。

 イラン核合意:これはバイデン氏にとって短期的に最も難しい判断として急浮上している。合意が成立した当時、バイデン氏はバラク・オバマ前大統領政権で副大統領を務めていた。バイデン氏は長いこと、イランの核兵器開発の道を閉ざす上で合意が最良の手段だと主張してきた。言うまでもなく、トランプ氏は合意から離脱した。合意はイランの核兵器開発を遅らせたにすぎないと主張し、厳しい経済制裁を再発動した。イランはこれを受け、大規模なウラン濃縮を再開した。