コロナ禍の住居喪失リスク、命綱の「借り上げビジホ」が利用されにくいワケ東京都が住居喪失者の救済のために用意する借り上げビジネスホテルは、本当に支援が必要な人に情報が届いているのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

小池都知事が表明した「借り上げ
ビジホ」は周知されているか

 コロナ禍の経済への影響が深刻になり、新型コロナ感染者の増加傾向が見られる中、冬が本格的に訪れようとしている。コロナ禍を各種給付金で生き延びてきた人々にとっては、「迫る期限切れ」という問題もある。住居を喪失しそうな人々、あるいはすでに住居を喪失してしまった人々にとっては、過酷すぎる年の瀬だ。

 しかし東京都では、4月の「緊急事態宣言」の際にネットカフェが閉鎖されたときと同様、住居喪失者に対する借り上げビジネスホテルの提供が行われる見通しだ。小池都知事は11月17日、この事業を5億円の予算規模で実施し、数百人規模以上のニーズに対応する方向性を示している。東京都の「やる気」と「本気」には期待したくなるのだが、筆者の内心の声が「いや、ちょっと待った」とブレーキをかける。

 4月の緊急事態宣言の際は、借り上げビジネスホテルの提供について、広報が充分に行われたとは言えない。ネットカフェに居られなくなった「ネットカフェ難民」の多くは、ビジネスホテルに無料で泊まれることを知らないまま路上生活者となったり、まだネットカフェが閉鎖されていなかった他県に移動したりした。

 この年末年始、居住の場を必要とする人々が確実に借り上げビジネスホテルを利用できるかどうかは、まず東京都のこの制度の存在を知ることができるかどうかにかかっている。次いで、東京都下の各自治体のどの相談窓口でも、住居を喪失しそうであったり住居を喪失していたりする場合には、確実にこの制度が利用できるように対応を受けられるかどうかも課題となる。しかも年末年始、役所の窓口は閉庁となってしまうのだ。

 そこで11月30日、生活困窮者支援にかかわる10団体が連名で、小池百合子東京都知事と東京都福祉保健局長に対し、住居喪失者への冬季(年末年始)緊急支援を要望した。要望の内容は、大きく「年末年始の閉庁機関中も生活困窮者支援の相談窓口を稼働させること」「緊急宿泊事業を実施し、住居のない人々に感染対策の取られた個室を提供すること」の2点である。