緊急事態宣言が奪った
ネットカフェ難民の「住」
今年3月から4月にかけて、セーフティネットに高い関心を寄せている人々の多くは、「ネットカフェ難民」の行方を喫緊の課題と考えていた。新型コロナ禍による近日中の「緊急事態宣言」は間近であろうと考えられていた時期である。
ネットカフェが休業要請の対象となる場合、ネットカフェを居住の場としている人々は、すぐ路頭に迷うことになる。平時と異なるのは、24時間営業のカラオケ店、ファミレス、ハンバーガーショップなど別の滞在先の選択肢が、同時に皆無となることだ。
東京都が2017年から2018年にかけて行った調査によれば、東京都内のネットカフェに“宿泊”(オールナイト利用)する人々は、1日あたり約1万5000人だった。このうち約4000人は、住居喪失を理由としてネットカフェに寝泊まりしていた。4000人のうち約3000人は、パート・派遣などの不安定就労であった。
緊急事態宣言は、収入の減少や喪失とともに、寝泊まりする場の喪失までもたらすこととなる。このことは、緊急事態宣言が実現していない段階でも容易に予見できるはずだ。
近日中の緊急事態宣言を控えた3月から4月初めにかけて、支援者たちは政府や東京都に対して、住居を喪失する人々に対する支援、とりわけ「住」の支援を、繰り返し要請した。小池百合子都知事は、4月6日の会見において、12億円を計上してビジネスホテルの借り上げ提供などの支援を行うことを表明した。
12億円の全額を宿泊費と食費に使用する場合、1泊6000円として20万泊を確保でき、4000人が50日にわたって宿泊できることとなる。もっとも、都が当初用意したのは100室であった。抗議や申し入れを受け、緊急事態宣言後の4月8日には500室に拡張された。その後さらに2000室に拡張されたが、不足していることは確かであろう。