香港の民主活動家として、香港紙「蘋果日報」を発行する黎智英(ジミー・ライ)氏ほど世界に名を知られている人物はいないだろう。香港警察が2日、根拠の疑わしい詐欺容疑で同氏を逮捕したことで、中国は明確なメッセージを発信した。われわれに反対する者はそれが世界のどこであれ、たたきつぶすと。今回逮捕に踏み切ったのは賃貸契約の条件を巡るトラブルが原因で、そこには目的のためならどんな容疑でも構わないというメッセージも込められている。詐欺容疑は同氏が既に直面する他の容疑の一部(特に国家安全維持法に関するもの)ほど重大ではないが、その狙いは他の容疑の裁判が始まる前に同氏をおとしめることにある。黎氏の逮捕と同じ日、民主化運動のリーダーである3人――黄之鋒(ジョシュア・ウォン)、周庭(アグネス・チョウ)、林朗彦(アイバン・ラム)の各氏――が、2019年の逃亡犯条例改正案に反対する抗議デモに参加した罪で禁錮刑を言い渡されたのは偶然ではない。ナンシー・ペロシ米下院議長がこれを「恐ろしくひどい」判決だと非難したのは正しい。