それだけではありません。普通は質問項目など箇条書きでホストにお渡しし、あとは流れでホストが質問をして行くのですが、浅利さんからは完全な脚本を要求されます。本当にお芝居のような脚本を書いてほしいとおっしゃるのです。(「それなら浅利さんはいらないよ」なんて、不遜なことを考えながら書いていた時期もありました)

 しかし浅利さんは、その脚本を見ながら、さらに相手を演出することを考えておられたのだと気づきました。相手の心の中にすぐに入るには、どうしたらいいか。初対面の人と既知の人では、脚本づくりに使う時間も全然ちがいます。

 人間を演出することがトコトン好きな人なんだと、少したってようやく気づきました。お陰様で、文芸春秋に珍しい財界人が登場する記事として、文芸春秋読者賞もいただきました。

文芸春秋での対談相手が
次々と劇団四季のスポンサーに

 24回、24人の超多忙な方にお付き合いいただいた対談は、別の形でも世間に貢献したと思います。経営者としての浅利慶太さんは、地道な努力もされていたのです。

 対談した経営者に対して、ミュージカルの招待状をお送りする。それも必ず御夫婦で、ということを励行されていました。

 私のような雑誌の担当者にミュージカルの衣装の感想を聞いていたときと同様、ミュージカルに興味がない経営者も夫人同伴となると出席せざるを得なくなります。それが重なると、ミュージカルの協賛企業となる――。いつの間にか、文芸春秋での対談相手の会社が冠企業になっていることに気が付きました。それから30年、日本の主要各都市には劇団四季の劇場が建ち、ほとんど毎日ミュージカルが上演される国となりました。