あの手この手で申請を抑制
「水際作戦」の現実とは

「フミダン」は、画期的なシステムである。しかし「フミダン」によって実現されるのは、生活保護の本来の運用なのだ。なぜ、このようなウェブサービスが必要となるのだろうか。その背景にあるのは、いわゆる「水際作戦」、あの手この手での申請抑制である。

 生活保護を必要としている当事者が直接福祉事務所を訪れると、たいていの場合は「まずは相談を」と言われるだろう。そして、答えたくない部分も含めてプライバシーや経歴を答えることを求められ、「就労継続の努力が不足しているのではないか」「親に頼れないのは自己責任ではないか」といった質問に傷つけられ続けることになる。

「心を折られる」というよりは、心が複雑骨折させられ、折れたままの形で固まってしまいそうな成り行きの末、運がよければ生活保護の申請書が差し出され、めでたく申請手続きを開始できる。

 しかし、多くの場合は3~4時間、場合によっては6時間以上に及ぶこともある「相談」の果てに、その日のうちに申請できない場合もある。「なんとか就労を継続しているけれども、生活を維持できそうにないから、生活保護を申請する決意をして福祉事務所を訪れた」という場合、長時間にわたる1回の「相談」が、生活保護申請の機会を決定的に失わせてしまうこともある。その人は、餓死や孤立死へと追い詰められ、遺体となってから発見されることになるかもしれない。

「つくろい東京ファンド」代表の稲葉剛さんは、「フミダン」開発の目的について、「水際作戦の無効化です」と明快に語る。

「先にFAXで申請書を送っておき、申請の意思表示を行ってから福祉事務所に行けば、用件が生活保護の相談であることを明らかにできます。生活保護を申請する前に、『相談』に3時間取られたり、生活保護以外の制度や社協の貸付を案内されたりする必要はなくなります」(稲葉さん)