エマニュエル・マクロン仏大統領Photo:Chesnot/gettyimages

【パリ】エマニュエル・マクロン仏大統領は「右派でも左派でもない」政策を掲げてトップに上り詰めた。過去数年は政治的分断を前に日和見的な態度を取ってきた同氏だが、ここにきて国家の危機に直面。どちらか態度を決めるよう決断を迫られている。

 フランスでは、黒人の音楽プロデューサーが警察に激しく殴られる動画が拡散したことで、警察の暴力や人種差別に抗議する大規模デモが数週間にわたって続いている。こうした中、ジェラルド・ダルマナン内相は、警察の様子をとらえた動画のネット投稿を制限する法案の制定を推し進めている。上院議会は来年初頭、採決を行う見通しだ。

 一連の動きで、マクロン氏は窮地に陥った。「回避できたはずの苦しい立場に、君は私を追い込んだ」。内情に詳しい関係筋によると、マクロン氏は閣僚幹部と行った緊急会合で、保守派の扇動者であるダルマナン内相にこう言い放ち、怒りを爆発させた。ダルマナン氏は動じなかったという。

 マクロン氏はこれまで、フランス経済の押し上げに向け複雑な労働法の改正を進め、欧州連合(EU)の財政再建に務めるなど、実務家として取り組んできた。

 かねてくすぶっている警察と国内少数派のイスラム教徒との間の緊張など「法と秩序」の問題については、おおむね内相に対応を委ねてきた経緯がある。