コロナ禍が浮き彫りにしたのは、日本の政治家が最悪という事実――そう話すのは、小説家の村上春樹氏だ。コロナから日本学術会議の問題、この国に必要なものまで、2020年の終わりにダイヤモンド編集部のインタビューで語った。前編・後編の2回で届ける。(ダイヤモンド編集部副編集長 杉本りうこ)
コロナは突発事ではなく
何かずっと予感していたもの
――初めまして。
(記者の名刺をしげしげと見て)「ダイヤモンド」って、月刊誌でしたっけ。
――いいえ、週刊誌です。お金のことばかり書いています。
そうなんだ(笑)。
――なじみがないと思いますが、今日はよろしくお願いします。2020年が終わろうとしています。新型コロナウイルスの感染拡大によって、社会の在り方も、歴史すらも変わるような年でした。この一年を村上さんはどう過ごしていましたか。
作家というのは元々、ずっと家にいて1人で仕事をしているものです。特に僕は交際範囲が狭いということもあり、コロナでも日常が変わったという感じはありませんでした。
朝起きて、近くを走って、仕事をして、音楽を聴いて、ビールを飲んで、そして眠る。こういう僕自身の生活はほとんど変わりませんでした。
ただ、世の中は大きく変わりました。1人で物を書いていても、そういう空気は感じます。だから、それにどう対処していくかを、僕もずっと考えざるを得ませんでした。
コロナというのは、突発的な個別の事象ではないと僕は思っています。世界を変えていくさまざまな要因の一つなのだと思っているのです。
今ちょうど、IT(情報技術)によって新しい産業革命のような動きが起こっています。気候変動も進んでいます。ポピュリズムやグローバル化も進行していて、世の中がどんどん変異し続けています。
そういう流れの中に、コロナも一つの変異の要因として加わった。そういうふうにしか僕には見えません。突然、コロナ禍が降り掛かってきたというよりも、何かずっと予感していたものが来たような感じです。